2022年6月2日から3日間の日程で、「New Education Expo 2022 in 東京」が開催されている。会場では教育向けのICT機器、デジタル教材・コンテンツ、サービスなどの展示に加え、連日多くのセミナーが予定されている。

New Education Expo 2022 in 東京の会場は、東京・有明のTFTビル。入場は無料だ
New Education Expo 2022 in 東京の会場は、東京・有明のTFTビル。入場は無料だ
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 初日である6月2日のセミナーは、大学向けまたは大学関係者による講演が多かった。その中でも、国立情報学研究所(NII) 所長の喜連川優氏の講演には、最も大きな会場に多くの聴講者が集まった。テーマは「教育×データで何が生まれるのか、できるのか〜情報学研究所の視点〜」。小学校から大学まで1人1台端末の時代を迎え、教育データをいかにして教育行政や個別の指導に生かせるかが、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の焦点になっている。喜連川氏はデータベース工学の分野で著名な研究者であり、氏が提唱した「データ駆動型教育への転換」は教育再生実行会議の第12次提言に盛り込まれた。

国立情報学研究所(NII) 所長の喜連川優氏。教育再生実行会議では第12次提言の作成に関わった
国立情報学研究所(NII) 所長の喜連川優氏。教育再生実行会議では第12次提言の作成に関わった
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 喜連川氏は日本の教育について、「教育に関して、これに効果があったといった話は、どれもエピソードばかりという印象を受ける」と切り出し、精緻なデータとエビデンスの上で成り立つサイエンスの世界から見た違和感を示した。

 喜連川氏が調べたところでは、米国においては「No Child Left Behind Act(NCLB)」や「Every Students Succeeds(ESSA)」が制定され、各州がさまざまな教育データを収集、分析しているという。各種のデータは公開され、保護者などが閲覧できる。そうしたデータに基づく米国の教育に対して日本では、「ゆとり教育の検証のように、政策をデータに基づいて評価してこなかったのではないか。そこが日本の教育の課題だ」と指摘した。

喜連川氏は米国で実践されている教育データの活用を紹介した(出所:喜連川氏の発表スライド)
喜連川氏は米国で実践されている教育データの活用を紹介した(出所:喜連川氏の発表スライド)
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 日本でもデータ駆動型教育を見据えた教育データの収集や研究は始まっている。喜連川氏は、九州大学や大阪大学においてLMS(学習管理システム)などの利用履歴を解析して分かったことなどの成果を紹介した。一方で、「直接指導する先生が教育データを使うのはよいが、研究者など第三者がどこまで使えるのかは検討課題」として、「研究者は研究そのものよりも、データの収集に大きな力を割いている」と訴えた。

動画教材がどのように再生されたのかを解析した例(出所:喜連川氏の発表スライド)
動画教材がどのように再生されたのかを解析した例(出所:喜連川氏の発表スライド)
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 New Education Expoでは、ほかにも教育データをテーマにしたセミナーが多数予定されている。東京の会期は2022年6月4日まで。大阪では6月10日、11日に開催される。