2022年6月2日〜4日に東京・有明で開催された「New Education Expo 2022 in 東京」では、教育データをテーマにしたセミナーが数多く企画された。EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の必要性が叫ばれる中、教育の分野でもデータを施策や指導に生かせるかが議論の焦点になっている。初日の基調講演では国立情報学研究所(NII) 所長の喜連川優氏が「教育×データで何が生まれるのか、できるのか」と題し、教育のデータ駆動について語った。

教育分野ではデータに基づく政策決定がなされていない

 2日目の6月3日には、文部科学省、デジタル庁、経済産業省の各担当者が登壇する「教育DXに向けた政策動向」に聴講者が集まった。その中でも注目されたのが、デジタル庁でデジタルエデュケーション統括を務める中室牧子氏の講演だ。中室氏は慶応義塾大学 教授で教育経済学を研究している。まず、麻生政権下のリーマンショック時に実施された1人当たり1万2000円から2万円の定額給付について、のちに麻生氏が「あまり効果がなかった記憶がある」と答えたことを例に挙げ、「日本の政策の問題点は、効果を客観的に検証していないことにある」と指弾した。

デジタル庁 デジタルエデュケーション統括の中室牧子氏。講演では、デジタル庁などが発表した「教育データ利活用ロードマップ」の炎上騒動にも言及した
デジタル庁 デジタルエデュケーション統括の中室牧子氏。講演では、デジタル庁などが発表した「教育データ利活用ロードマップ」の炎上騒動にも言及した
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 同じようなことは、昨今のコロナ禍でも繰り返されている。中室氏は米国で実施されたコロナ禍の経済刺激策に関する影響調査を引き合いに出し、低所得者への景気刺激策は、コロナ禍で影響を受けた飲食店などの分野には流れず、雇用を増やす効果が低かったという検証を紹介した。その上で、「データを用いて政策を決定するのは当然の時代になっている。それが最も遅れているのが教育の分野だ」と指摘した。

公共政策において費用対効果を受益者の年齢別に分析した米国の調査結果。子供の教育と健康に投資すれば、将来税収の増加や社会保障費の減少という大きな効果が得られるという
公共政策において費用対効果を受益者の年齢別に分析した米国の調査結果。子供の教育と健康に投資すれば、将来税収の増加や社会保障費の減少という大きな効果が得られるという
(出所:中室牧子氏の発表スライド)
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 教育政策について中室氏は、公共分野での政策で最も費用対効果が高いのは子供の教育と健康に対する投資であることをデータで説明した。今後の教育政策については、「これまでの需要サイドを刺激する再分配から、教育の質を高める供給サイドの投資へとシフトすべきだ」と主張。「そのためにデータを活用していく必要がある」と訴えた。