漫画や書籍などの海賊版対策を強化する改正著作権法が2020年6月5日、参議院本会議で可決・成立した。2021年1月1日に施行する。これまで違法ダウンロードの規制対象は音楽と映像のみだったが、今回の改正で規制対象を漫画や書籍、新聞、論文、ソフトウエアのプログラムなど全ての著作物に広げた。

2021年1月に施行される改正著作権法の概要
出所:文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律の概要

 規制対象を広げた一方で、Webサイトのスクリーンショットやライブ配信などの映像などに映り込んだ著作物、低画質の画像、数十ページある漫画の数コマや長文記事の数行など著作物の一部のダウンロードは対象外として、インターネットを使った情報活用を阻害することへの懸念に配慮した。上記の事例は、著作権者の利益を不当に害しないと認められる「特別な事情がある場合」に当たる。

 改正著作権法のうち、第35条で規定する教育の情報化に対応した権利制限規定などの整備に関しては、「授業目的公衆送信補償金制度」が2020年4月28日からスタートしている。 ICT活用で教育の質を向上するため、学校等の授業で教員が他人の著作物を用いて作成した教材をオンラインで送信する行為などが個別の許諾なしに可能になった。

 今回の改正では、海賊版サイトに誘導する「リーチサイト」の運営が違法となり、この規定に関しては2020年10月1日から施行する。違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ)を悪用する海賊版サイトへのリンク情報を集約した「リーチサイト」でリンクを提供する行為は有罪の場合、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、サイトを運営する行為は5年以下の懲役か500万円以下の罰金が科される。

 利用者も違法と知った上でダウンロードする行為が規制され、悪質な場合は刑事罰が科される。刑事罰に問われるのは、正規版が有償で提供されている著作物を継続的にダウンロードした場合。起訴には著作権者の告訴が必要で、有罪なら2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科される。

 文化庁はこうした線引きを指針としてまとめ、より分かりやすいQ&Aを学校現場や一般向けに提供する方針だという。

 一連の著作権法改正は、デジタル技術の進展により、新しく生まれた著作物の利用ニーズに対応することが目的。著作権者の許諾を受ける必要のある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者向け、美術館などでのアーカイブ利用など著作物利用を円滑に行えるようにするためのもの。

 改正著作権法案は当初、2019年の施行を目指していたが、Webサイトのスクリーンショットを保存しただけで違法になる恐れがあるとの指摘や、海賊版サイトの影響を受けていた漫画などの著作権者からも「創作を萎縮させる恐れがある」との反対などが相次ぎ、国会への提出を見送られてきた経緯がある。今回の改正を契機に海賊版サイトの運営に歯止めをかける狙いがある。