保護者にどう伝え、どう巻き込むか

 立教大学大学院 人工知能科学研究科 教授の村上祐子氏は、情報哲学や情報倫理を研究する立場からデジタルシティズンシップを解説した。抑制的な情報モラルやルールに対する「認識的不正義」による分析は、現場の教育関係者にはなかなか見られない視点だ。「どうせ子供だから」という誤った認識に基づき、「排除される人に知識を与えず、対話もせず、自己決定権に干渉することが子供たちに悪影響を与える」という考えを示した。

立教大学大学院  教授の村上祐子氏は、「教育において認識的不正義は見過ごせない」と主張した
立教大学大学院 教授の村上祐子氏は、「教育において認識的不正義は見過ごせない」と主張した
(出所:村上祐子氏の発表スライド)
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 セミナー後半のシンポジウムでは、登壇者から保護者を巻き込んでいくことの重要性を指摘する声が聞かれた。法政大学キャリアデザイン学部 教授の坂本旬氏は、「社会的に問題のある行動を起こすのは子供よりむしろ大人の方で、シティズンシップは大人の問題でもある。つまり、学校の先生が簡単に教えられるようなことではなく、一緒に考える必要がある。その点では保護者も同様」と指摘した。

6名の登壇者。コーディネーターは国際大学GLOCOM 准教授の豊福晋平氏が務めた
6名の登壇者。コーディネーターは国際大学GLOCOM 准教授の豊福晋平氏が務めた
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 年間150校近い学校でデジタルシティズンシップの授業をしている鳥取県教育委員会 講師の今度珠美氏は、「保護者も子供と一緒に考えてもらうようにしている」という。その上で保護者には、「デジタルシティズンシップ教育を倫理、人権教育として捉え、公共空間での振る舞いを子供に教えるとよいと伝えている」と話した。岐阜聖徳学園大学教育学部 教授の芳賀高洋氏は、「端末の使い方をルール化した学校を見ると、そもそもGIGAスクール構想の理念を理解しているのか疑問に感じることがある。ルールを決める前に、デジタル機器を使う意義などについて時間をかけて説明し、対話することで保護者も前向きになる」と語った。

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