2022年6月2日から3日間、「New Education Expo 2022 in 東京」が開催された。3日目のセミナー「1人1台端末時代の情報モラル~子どもたちと考える自律的なネット活用~」は、現役の高校生がコメンテーターとして参加するディスカッション形式で行われた。
参加したのは関西学院高等部、江戸川学園取手中・高等学校、鎌倉女学院中学・高等学校の高校生8人。コーディネーター役として、兵庫県立大学 環境人間学部 准教授の竹内和雄氏と、関西学院千里国際中等部・高等部 進路情報センター長の米田 謙三氏が登壇した。進行もユニークで、セミナー受講者から生徒への質問が数多く出され、近くに座っているセミナー受講者同士による意見交換の時間も設けられた。
子供のネット利用は何歳から? 現状の認識に大きなズレ
まずは竹内氏から、学校の現状認識を共有する目的で受講者に向けていくつかのクイズが出題された。「子供のネット利用はいつからか?」「専業主婦世帯より共働き世帯が数で上回ったのはいつからか? 」「暴力行為の件数が急上昇しているのは小学校、中学校、高等学校のどれか?」といった問題が出された。クイズの答えは、ネットの利用は赤ん坊(0~2歳)がトップ、共働き世帯の方が多くなったのは1990年と30年以上前、暴力行為が増えているのは小学校だという。意外な回答が続き受講者にざわめきが起こった。
小学校で暴力行為が増えている背景にはネットゲームがあるという。ゲームを通したボイスチャットで言い争いになり、翌日学校でけんかに発展するといった事例が増えている。高校生でも「プレイスタイルで意見が割れて険悪な雰囲気になる場面は見かける」(参加生徒)という。こうした問題を教員が指導するにも教材はなく、そもそも研究者が「私以外にほとんどいない状態」(竹内氏)だ。
近年のいじめはスマホの匿名性に起因
SNSに起因するいじめの変化についても議論された。携帯電話時代のSNSサービスに起因する被害児童は数が減った一方で、「LINE」や「Twitter」などが若者に浸透し始める2012年ごろを境に被害児童数が再び増加している。SNSはリアルタイム性や匿名性が高い分、いじめにつながりやすくなる。「LINEは記名性が高く、直接的な攻撃は起きにくい」一方で、「Twitterで匿名の別アカウントなどの方が攻撃は始まりやすい」(参加生徒)という。
一方で、Twitterの副アカウントは匿名性の高さをうまく活用する例もあった。フォロー・フォローワーを0人の鍵アカウントを作り、「他人に言えないことを発露したり、メモ代わりに思いついたことを書き込んだりする」といった使い方をする生徒もいた。「鍵アカウントなら自分のスマホ以外ではほぼ見ることができないので紙のメモよりも安心」「自分の気持ちを文字にすることで他人に見られているような客観性が持てる」(参加生徒)という。