うまく取り組めない学校はまず便利さの実感を

 一方で、ICT利活用をやってみたがうまくできない、便利さなどその効果が実感できず、おのずと利活用が停滞してしまうといった学校の例も聞きます。活用方法のイメージが湧かない場合は、活用例や先行事例を参照してほしいと思います。GIGAスクール構想開始から2年たち、多くの実践例が創出されてきました。文部科学省のポータルサイト「StuDX Style」をはじめ、公的機関も多くの例を紹介しています。書籍や動画も多く出ています。個人がSNSを通じて紹介するケースも増えてきました。

文部科学省が運営するWebサイト「StuDX Style」には、GIGAスクール端末のさまざまな活用例が掲載されている
文部科学省が運営するWebサイト「StuDX Style」には、GIGAスクール端末のさまざまな活用例が掲載されている
[画像のクリックで拡大表示]

 ICTへの苦手意識がある教師は、まずは触れて体験してみることだと思います。各教育委員会などの研修の機会がありますし、OSベンダーなどの事業者が開く無償研修などの活用も有効です。

 子供たちに聞くのも効果的です。子供たちに尋ねるという行為に抵抗がある方もおられると聞きます。しかし、年長者が若者より全ての物事を知って優位でいなければならない時代は終わっています。それは子供たちも知っています。教育の本筋は教師が教えつつ、細かな利用法などは子供にも聞きながら、共に使いこなすことが、子供の成長にも良い影響を及ぼします。

 「普段使い」もキーワードでしょう。週1回程度の端末利用では、ICTは「特別」なものにとどまっており、逆に使うことへの負担を感じてしまいます。毎日複数回、ほぼ毎時間使うことで当たり前となり、ストレスを感じなくなります。

学校全体でのBPRの必要性

 このように取り組み始めても、端末への入力や印刷などで逆に手間が増えてしまい、便利さが実感できないといったことも端末活用から遠ざかってします原因です。便利にならないと利活用が根付かないのは当然のことでしょう。これは紙などアナログ情報をデジタル化したことにとどまり、学校全体のデジタル技術への最適化が十分でないことが原因の場合が多いと言われます。

 例えば、保護者との連絡がデジタル化されても、学校でその連絡を確認して共有する作業者はこれまで通り、子供たちへの連絡だけは依然としてプリント、ほかの教職員や教育委員会とのやり取りは多くが書類といった状態のままでは、逆に全て紙だけの扱いより端末処理に向き合う分、手間が追加されたように見えます。授業においても、端末がノートの代替程度の利用にとどまるのであれば、端末を準備したり片づけたりする手間が不便に思えます。

 実は、このような例は教育以外の分野でも頻発しています。企業で経営者の掛け声でデジタル機器を導入したが、逆に作業が増えて手間になったというものです。デジタル化が根付くためには、デジタル機器やサービスの導入に合わせ、アナログ時代からのさまざまなプロセスの抜本的な見直し、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)が必要です。

 一般的にデジタル化には3段階あると言われます。まずはアナログや物理データ、紙などをデジタル化するデジタイゼーション段階。次に、デジタル化したデータを活用し、プロセスを効率化するデジタライゼーション段階。そして、デジタル社会の文化や風土まで変革するデジタルトランスフォーメーションです。

デジタル化の3段階。GIGAスクール構想による環境整備が完了した現在は、第1段階のデジタイゼーションを実現したにすぎない
デジタル化の3段階。GIGAスクール構想による環境整備が完了した現在は、第1段階のデジタイゼーションを実現したにすぎない
[画像のクリックで拡大表示]

 今の学校はようやくデジタル機器が導入されたデジタイゼーション段階にすぎません。デジタルに合わせた学習者主体の教育への転換、教職員の校務プロセスの見直しによる働き方改革にまで至る必要があります。好事例には、意識していなくてもこのBPRも踏まえたものが多くあります。BPRの視点を意識して導入、活用することで、その便利さを実感してほしいと思います。