オンラインなら距離の制約を受けずにレッスンができる

 オンラインレッスンには、端末の種類によらない利点もある。一番は、レッスン場所までの移動が必要ない点だ。移動の負担を減らせるだけでなく、移動による感染リスクをなくす効果もある。2人の教室には、新幹線を利用するなどして遠方から対面レッスンに通う生徒もいる。こうした生徒からは、対面レッスンが可能になった後も、オンラインレッスンを続けたいという声が上がっているそうだ。住む場所によっては、近くに通える音楽教室がないということもある。また、遠隔地の特定の講師から習いたいという場合もある。今後、質の高いオンラインレッスンに取り組む講師が増えていけば、距離の制約を受けずにレッスンを受講できる生徒が増えるだろう。

 ビデオ会議サービスの多くは、録画機能を備えている。レッスンの様子を録画して、生徒が復習に活用することも考えられる。徳本さんは、「今まで、自分の演奏をスマートフォンで録音して復習用に生徒に提供してきた。複雑な指使いの曲などは、講師の指使いを見ながら復習すると音だけの場合よりも効果がある。演奏する姿勢の確認にも役立つ」と映像活用の効果に期待している。

上塚さんのオンラインレッスンを受ける小学校3年生の高橋こなさん。「自転車でレッスンに行かなくて楽だった」という可愛いらしい感想も。後述する「フルートオーディション」にも参加している
デュアルディスプレイ機能を利用すれば、パソコンに相手の様子を表示しながら、別の画像を大型テレビなどに映し出せる

 今回の検証で、オンラインレッスンの課題も見えた。一つは、通信回線が原因で音が安定しないことだ。ビデオ会議サービスは、講師、生徒の双方がインターネット回線に接続して利用する。回線の質がどこかで悪くなると、音が途中で途切れてしまう。また、ビデオ会議サービスの多くは、音声が短時間途切れると、直後に「早送り」で遅れを取り戻して相手に伝える。音声での会議では便利な機能だが、楽器演奏の場合はそのままの音を相手に伝えられなくなる。

 講師と生徒が同時に演奏する「アンサンブル」もできない。現在のビデオ会議サービスは、通話にタイムラグが生じる。このため、生徒が端末から聞こえる講師の音に合わせて演奏すると、講師側では自分の演奏から遅れて生徒の音が聞こえることになる。

 パソコンやスマートフォンの内蔵カメラを使ったオンラインレッスンでは、カメラ位置を固定にしていることが多い。映像の範囲が固定だと、対面と比べて、楽譜の説明などにどうしても手間がかかる。Liebe フルート音楽教室に通う小学生の高橋こなさんの母親の高橋ふみさんは、「楽譜の説明のときに、教室だと指で示してもらえるのですぐに場所が分かるが、オンラインの場合は何小節目という説明を聞いても親子で場所がすぐに分からないことがあった」と打ち明ける。

 学校教育の遠隔授業では、パソコンのカメラに向かって教員が板書しながら説明し、教科書について説明する際には手元の実物投影機(書画カメラ)の画像に切り替えて説明するなどの工夫をしている例がある。楽器演奏のオンラインレッスンでも、複数のカメラを切り替えて利用したり、パソコンの画面上の楽譜を共有したりなど、工夫を凝らす余地がありそうだ。