文部科学省は2020年6月24日、大学教育の中で授業にデジタル技術を活用するため、大学教員やデジタル教育サービス「EdTech」を提供する民間企業などから新しい取り組みのアイデアを公募し、教育現場で実践、試行錯誤を進める取り組み「大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブ(Scheem-D)〜 With コロナ/ After コロナ時代の大学教育の創造〜」を公表した。

 文部科学省は、大学教育は学生の学びのために資源を集約させる「学修者本位の大学教育」への転換が必要で、デジタル技術で新たな利益や価値を生み出す「デジタライゼーション」が学びを深化させる可能性を秘めているとしている。新型コロナウイルス感染症対策による休校措置などで学びに大きな影響が出たことを背景に、感染症が存在する中で生活していく「With コロナ」時代、感染症が収束した後の「After コロナ」時代においては、デジタル技術と実際の学びを上手に組み合わせた教育を具体化することが急務という問題意識が、今回の取り組みの背景にある。

 具体的には、大学教員やEdTech事業者などが、公開イベントでアイデアを提案し、それに賛同した大学などとマッチングして、実際の授業の中で実現可能性を検証していく。その内容や結果を検証、情報発信していくことで、授業改善の知見を蓄積していく。

文部科学省による大学教育改革の新しい取り組み「スキームD」の実施イメージ。取り組みの名称である「スキームD(Scheem-D)」は、Student-centered higher education ecosystem through Digitalization(デジタル化を通じた学生本位の大学教育の生態系)の略称
出所:文部科学省「大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブ(Scheem-D)〜 With コロナ/ After コロナ時代の大学教育の創造〜」

 文部科学省が想定している授業例としては「MOOCsと人工知能(AI)の質疑応答だけで、高い学修到達度を達成できる授業」「仮想現実(VR)、拡張現実(AR)を用いた実習で、 現場実習や実験に近い経験ができる授業」「自分の分身のキャラクター(アバター)などで学生同士の学びの場を創出したり、自主的な学びへ誘導したりする取り組み」「個別最適化の学び(アダプティブ・ラーニング)の実現 」などが挙げられている。

 重要なのは、デジタル技術を用いて授業をすることが目的ではなく、デジタル技術を活用することで高い学修到達度を達成したり、自発的な学び・気づきへ効果的に誘導したり、実習・実験に近い経験の機会を確保したりするなど、「授業の価値を最大化」することだという。

 こうした取り組みによって、大学とEdTech事業者など産業界が教育を改善する生態系(エコシステム)を構築していくことにつなげる。「教育にはコストがかかる」というこれまでの意識を「教育でヒト、モノ、カネを呼び込む」考えに変え、その結果として大学教育への投資を呼び込んで社会全体で学生を育てる生態系にしていくとともに、さまざまな事例を海外に情報発信していくことも視野に入れている。

 この取り組みを実行するために、文部科学省の中に有識者と文部科学省スタッフから成るプロジェクトチーム「チームScheem-D」を設置して企画・運営を行なっていく。

 アイデアは8月にも公募を始め、選定後に11月にも公開イベントで披露し、「YouTube」と「ニコニコ動画」でリアルタイム配信をする。2021年度以降は四半期ごとに実施していく予定という。