インテルは2020年7月1日、井田晶也執行役員パートナー事業本部本部長が、国内の教育市場向けの取り組みについて説明した。加えて、学校・教員向けに遠隔授業の実践や教材制作に利用できるパソコンや機器環境、研修コンテンツを無償提供する「オンライン教育推進 PC機器無償モニター・キャンペーン」を実施する。

 文部科学省が推進するGIGAスクール構想でパソコンやタブレット端末の導入が進んでいる。新型コロナウイルスの感染症対策で、GIGAスクール構想は2020年度の補正予算により前倒し実施されるため、配備される端末数は900万台近くに達するとみられる。インテルの部品(CPU、メモリー、ネットワーク関連)を使うパソコンの台数は数百万台規模になるため、パソコンメーカーと連携して供給が滞らないようにする。

インテルの国内教育市場への取り組み。1人1台の教育パソコン環境の実現、次世代教育サポート、教育DcXと新しい教育テクノロジーの積極導入を柱としている
出所:インテルの説明資料より

 ただ、文部科学省の調査(全国に緊急事態宣言が拡大された4月16日時点)によると、新型コロナウイルス感染症による一斉休校で、双方向の遠隔授業を実施すると回答した学校は公立小中学校・高等学校・特別支援学校全体のわずか5%にとどまった。ICT環境の整備が遅れていたことに加えて、教職員のICT利活用に関するノウハウ不足も要因の一つで、インテルは教職員の支援を通じて学校教育のICT活用を促したい考えだ。

 GIGAスクール構想のほかにも、感染症対策で遠隔授業が注目されたことで、公立高校や私立学校でも1人1台のコンピューターを導入する動きは進んでいる。インテルは地方自治体と連携して、BYOD(Bring Your Own Device:個人所有の端末の持ち込み)やBYAD(Bring Your Assigned Device:推奨機種の導入)を推進し、地域の量販店やオンライン通販でも生徒向けパソコンの購入促進を図る。特に教職員向けには、Intel vProプラットフォームを搭載したビジネス用パソコンを提案する。管理機能やセキュリティーが向上し、運用管理がしやすくなるとしている。

 同社では、国内の教育パソコン市場は、小中高等学校および大学、教員向けを含むと1700万大規模に上るとしており巨大市場の取り込みを狙う。

 次に力を入れているのが、オンライン教育の推進や教員のスキルアップのための研修を開発・提供する「次世代教育サポート」だ。コロナ禍でも学びを止めない教育環境実現に向けた施策が必要で、通常の対面授業とオンライン学習の併用を推進していく。教室や教員の自宅からでも遠隔授業を実現できる環境整備のほか、効果的にオンライン教育を実現できるよう授業デザインなどについても教員研修を実施する。

 インテルは、すでに教員研修「Intel Teach Program」を提供しているが、AI(人工知能)や機械学習、データ解析、プログラミングなど最新テクノロジーを利活用するための教員研修プログラム「Skills for Innovation (S4I)」を開発し提供していく。

 S4Iでは、テクノロジーを活用するスキルと、社会で必要となるスキルを融合させ、学習を通じて学んでいける授業デザインの教育研修プログラム。社会的な課題を題材に、数学や他教科の視点からテクノロジーを利活用した解決手法により課題解決を目指すプロジェクト型学習だ。例えば、コロナ禍での感染拡大を、数学や地理学などの観点からシミュレーションを行い、感染防止の考え方や対策、テクノロジーを活用した課題解決に向けて成果物を作成したり発信したりする。2020年秋から一部の自治体や学校で試験導入し、2021年春から本格導入していく。

 もう一つの取り組みが、教育そのものの変革である「教育DcX、NewTech推進」。昨今DX(Digital Transformation:デジタル化がもたらす変革)が喧伝されているが、インテルはDcX(Data Centric Transformation:データ中心の変革)を打ち出している。同社が言う教育DcXとは、データを効果的に利活用することで個別最適化した学習による教育の向上などを指す。

 これまでは教育現場でのICT機器の利活用の有無が教育格差につながるとされてきたが、GIGAスクール構想などによりICT環境の格差は解消されていくとみられる。一方で、ICT機器の利用で大量に生じるデータをいかに活用できるかで「データデバイド(データによる分断)」という名の教育格差が生まれるとしており、今後の教育改革の課題になるという。インテルは自治体やパートナー企業・組織とともに、こうした教育データを活用したEBPM(Evidence-based Policy Making:エビデンスに基づく政策立案)を支援するとしている。

 さらに、AI(人工知能)や IoT(モノのインターネット)などを積極的に推進していく。パソコンメーカーなどパートナー企業と連携し、教育変革に向けた最新テクノロジーを導入したり、STEAM(Science(科学)、Technology(技術)、 Engineering(工学)、Arts(教養科目)、Mathematics(数学))教育やプログラミング教育推進に向けたテクノロジーの積極導入を支援したりする。

 「オンライン教育推進 PC機器無償モニター・キャンペーン」ではダイワボウ情報システムと協業し、同社の「おてがる遠隔授業パック」を学校にモニター提供する。パソコンと4Kビデオカメラ、三脚、USBマイク、ビデオ編集ソフト、モバイルルーターのセットで、20校程度のモニター校を募り、1校当たり2〜5セットを提供する。2021年4月まで実施する予定で、オンライン教材の制作や配信、遠隔授業やビデオ会議の開催などICT利活用に協力してもらう。