児童・生徒1人1台の端末と校内ネットワークの整備するGIGAスクール構想で学校環境のデジタル化が進む中、文部科学省は「学校現場における先端技術利活用ガイドライン」を策定し、教育ビッグデータの収集や学習履歴などのデータを活用した指導・支援を推進する。そのために教育現場のあらゆる情報を標準データ化し、 効果的に分析したり、利活用したりできるようにする。2020年7月7日に開催した「教育データの利活用に関する有識者会議」の初回会合で方針を示した。会議の座長は東北大学大学院の堀田龍也教授が務め、会議の期限は2022年3月末まで。

教育現場でICT環境を基盤とした先端技術と教育ビッグデータを活用する意義
出所:教育データの利活用に関する有識者会議資料「教育データの利活用について」より

 文部科学省では、ICTを基盤とした先端技術・教育ビッグデータは教員本来の活動を置き換えるものではなく「子供の力を最大限引き出す」ために支援・強化していくものと位置付ける。教育ビッグデータを効果的に活用するには、データの種類や単位が事業者や使用者となる学校や教員ごとに異なるのではなく、相互に交換や保存・蓄積、分析・解析が可能なようにデータの技術的な規格を標準化することが不可欠だ。

標準化する教育データの内容
出所:教育データの利活用に関する有識者会議参考資料「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」より

 教育に関する情報は多種多様で膨大な種類があるが、標準化の対象はデータの相互運用性を図る上で定義の統一が必要なものとする。校務系データでは、例えば子供の属性情報(氏名、生年月日、性別など)、 学習評価データ(定期テストの結果、評定など)、行動記録データ(出欠・遅刻・早退、保健室利用状況など) 、保健データ(健康診断の結果など)など。学習系データでは、例えばデジタル教科書・教材の参照履歴、協働学習における発話回数・内容、デジタルドリルの正誤・解答時間・試行回数などの学習履歴データが標準化の検討対象。有識者会議での議論を基に、2020年度中に一定の結論を出すとしている。

 また、学習系データを横断的・体系的に活用するため、学習指導要領に基づく授業内容や単元などに共通コードを設定する。これまで教科書や教材には出版社などが学習内容に独自コードを付番しているが、 事業者ごとにコードが異なるため学校・個人ごとの利活用ができなかった。教育ビッグデータの活用には、使用教材やサービスにかかわらず共通コードが必要で、学習指導要領の内容・単元ごとに共通コードを設定することが不可欠としている 。

学習指導要領のコード化のイメージ
出所:教育データの利活用に関する有識者会議参考資料「学習指導要領のコード化(案)について」より

 コード化の対象は、幼稚園・小中学校・高等学校・特別支援学校の全ての教育機関と全教科で、学習指導要領の全項目(総則、各教科、特別の教科 道徳、総合的な学習の時間等)にコードを付与する。コードは16桁で、それぞれの桁に告示時期や学習種別、教科、分野・科目・ 分類 などが割り振られる。GIGAスクール構想の加速化を受け、できる限り早く活用が可能できるよう今年の夏頃に公表を行う予定。

 これまで教育データの利活用では、(1)学習指導要領の求める資質・能力を育成するため、どのようにデジタル機器を利活用するのが効果的か実証的な検証例が少なく評価できない、(2)データが機関や事業者ごとに異なり、膨大なデータを収集してもデータの受け渡し(データ・ポータビリティ)が確保されず正確な比較参照ができず、教育の質向上に活用できない、(3)セキュリティ確保やプライバシー保護に重点を置きすぎ、データの利活用が進まない、といった課題が指摘されてきた。今回検討を進める教育データの標準化で、これらの課題を解決していくことを目指す。