昼休みに視聴できる教職員向けオンラインセミナーを開催

――このようなノウハウは講習会以外にどのように伝達しているのですか。

 国立情報学研究所(NII)が主催している「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」というセミナーが連続して行われています。これを参考にして、教職員向けに熊本大学版「遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」を立ち上げました。午前中の授業が終わって、午後の授業が始まるまで、お昼休みに視聴してもらえるようなセミナーを行っています。

 初回は学長が話をしたり、遠隔授業をする上で、シラバスの内容、授業の実施状況など対応すべき項目を周知したりしたほか、授業の内容を録画してビデオ・オン・デマンド(VOD)で映像配信する際の著作権に関する注意点、Zoomのセキュリティを上げる措置の周知徹底など、さまざまな内容を配信しました。

 第一タームが終わる6月中旬までに課題を解決することを目指していたので、このセミナーは4回くらいの開催を考えていました。本学の教員数は約900人です。初回のセミナーは147人がライブ視聴、2回目は115人、3回目は98人、4回目は82人でした。ライブ以外にも録画した内容を後で確認してもらえるようにしました。

――熊本大学では、どれくらいの数の遠隔授業が実施されているのですか。

 本学では、学部の授業科目数は2328科目あります(前学期第2ターム終了時点)。緊急事態宣言が解除され、6月1日以降は対面授業を一部認めていますが、対面でなければならない科目を除き遠隔授業を実施することにしており、対面で面接授業を実施する場合でも3密を避けるため教室の収容人数の50%以下で行っていることもあり、他の教室や自宅などでも受講できるように、Zoom配信を行っている場合もあります。

 7月24日の集計で1222科目、過半数の科目(52.5%)で遠隔授業を実施しています。教養教育に関しては、6月中旬の第1ターム終了までは、100%遠隔授業で行いました。

――コロナ禍はまだ終わったわけではありません。今後の対応について、どのように考えていますか。

 教育のデジタル化による変革(DX、Digital Transformation)は避けて通れません。これまで教育分野はデジタル化がなかなか進みませんでしたが、コロナ禍をきっかけに一気にICT利活用が進みました。学生の出席を確認したり、遠隔の授業を行った内容を録画してMoodle側に保存し、何か災害があった時に学生が録画した授業を視聴したりできるようにする流れができました。デジタル化は加速していると感じています。

 今のところ、対面授業と同じ内容を遠隔で行えばいいという意識が教員には根強く残っていますが、あらかじめ素材を提供して予習し、授業はディスカッション中心にするなどICTを活用したデジタルならではの授業のやり方に変えていくことも必要です。今回はコロナ禍という緊急避難的な要因がありましたが、授業をデジタル化して変革するパラダイムシフトの絶好の機会で、これを逃してしまうとしばらく大きく変革することはできないかもしれません。

――遠隔授業を進める上で、デジタルならではの投資も必要になりますね。

 多くの学生がアクセスするので、通信回線が逼迫してしまう輻輳(ふくそう)は深刻な課題です。また、ライブ型の遠隔授業だけでなく、授業内容を収録してビデオ配信することは必須です。本学では、Zoomの導入時より録画機能を活用して、学内VODサーバーとMoodleの連携を推奨してきました。

 サーバーの増強も喫緊の課題です。遠隔授業を進めることになって、録画データも増えたため、サーバー利用量がどんどん増えています。3月段階では約1.4TB(テラバイト)の使用量だったのが、6月下旬には2TBを超え、7月下旬には約2.4TBに達しました。毎月280GBくらいデータ容量が増えています。コンテンツ数も月1000本以上追加されていて、このままではサーバー容量は半年くらいしか持ちそうにないので、継続性を担保するための投資も必要になってきます。

VODサーバーのデータ使用量とコンテンツの増加数。遠隔授業が本格化した5月以降授業コンテンツが毎月1000件以上追加され、サーバー使用量も急増している
VODサーバーのデータ使用量とコンテンツの増加数。遠隔授業が本格化した5月以降授業コンテンツが毎月1000件以上追加され、サーバー使用量も急増している
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