富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は2021年4月1日、レノボPCSDアジアパシフィックSMBセグメント担当エグゼクティブディレクターの大隈健史氏が代表取締役社長 執行役員社長/CEOに就任した。前社長の齋藤邦彰氏は取締役会長になった。

 レノボ・グループのPCメーカーであり、富士通PC 40周年の年に新社長に就任した大隈氏に、FCCLの今後について聞いた。

2021年4月に富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の社長に就任した大隈健史氏

──2021年4月に社長に就任して以来、どのように事業を進めてきましたか。

 実はまだ新型コロナウイルス感染症の影響もあって、全ての事業所を回れていない状況です。本社は川崎市ですが、島根県にはノートパソコン、タブレットなどを製造する島根富士通(島根県出雲市)があります。海外ではドイツ・アウグスブルグに欧州市場向け拠点のFCCL GmbH、台湾にはFCCL台湾オフィスがありますが、いずれもまだ訪問できていない状況です。本来は社長就任と同時にロケットスタートを切りたいところですが、外部環境の要因もあって、少々歯がゆさも感じています。

 万が一にも工場の稼働が止まるようなことがあってはいけないので、本社から各拠点を訪問するのは控えています。もちろんオンラインでのミーティングはしているのですが、工場を回ったり実際の現場で関係を作ったりしていくことはできていません。感染者数が落ち着いて、ワクチン接種率が高まった時点で訪問することを考えています。

──これまではレノボの側からFCCLを見てきたと思います。FCCLの現状をどう認識していますか。

 レノボ・グループの中でも、FCCLには明確な強みがあります。FCCLは製造から販売まで一体になったPCメーカーです。他のPCメーカーでも、商品企画や開発、製造、販売、サポートまで一体で運営できている企業は少ないと思います。

 レノボは製造や開発などの水平分業を突き詰めて効率化している企業です。FCCLは製造と販売が一体経営されていて、それぞれの現場が距離的にも近く、同じ言語で同じ場所で対話できることで、顧客の要望に素早く対応できる点が大きなメリットです。例えば、国内に島根富士通の工場があるので、注文から最短で2、3日で出荷できる短納期を実現できますし、製品の仕様変更や万が一品質問題が起きた場合の対応を素早く実行できます。

 また、製販一体のFCCLでは最新の技術やOSなどを取り入れた製品をいち早く市場に投入することができます。例えば、世界最軽量のモバイルノートPC「LIFEBOOK UH」シリーズは、素材や構造をゼロから見直し、13.3 型ディスプレイを搭載しながら634グラムという軽さを実現しています。

 レノボでももちろん軽量PCを開発してきましたが、グローバル市場をターゲットにしたPCメーカーでは、どうしても世界中からの要望を取り入れた最大公約数的な製品にならざるを得ません。例えば薄さと軽さのどちらを重視するかという場合、欧米は薄さとメタル系の素材を好み、結果として軽さは求めない傾向があります。一方アジア市場では公共交通機関でPCを持ち運ぶ文化があり、軽さを重視する顧客が多いのです。

 仮にFCCLがグローバル展開をしていて世界中の顧客に向けて販売していたら、世界最軽量のUHシリーズのような尖った製品開発は難しいと思います。

──逆に課題と感じている点はありますか。

 FCCLは2018年に富士通の子会社からレノボとの合弁会社に変わり3年が経ちました。想定していたほどにはレノボとの協業が進んでいない面があります。FCCLはレノボ・グループの中で唯一製造・販売・サポートまで一体経営している企業です。もう一社の合弁会社であるNECレノボ・ジャパングループはよりレノボに統合されて経営しています。そのほかのレノボ傘下の企業でもレノボ流の経営がされています。

 もちろん部品の調達などはレノボ・グループとの統合が進んでいますが、まだまだレノボが持つ良い面を取り込めていないと感じています。レノボ・グループは従業員6万人の企業グループですが、FCCLは2000人規模で売り上げの大半が日本市場で、一部欧州とアジアで販売している状況です。

 グローバル市場に展開しているレノボは、FCCLより圧倒的に豊富な製品とサービスのポートフォリオを持っています。FCCLはもっとレノボから技術や製品を取り入れていけばいい。FCCLはせっかく良い立ち位置にいるのに生かしきれていないのではないかと感じています。

 レノボと合弁化して最初の3年はまず基礎的な面に注力してきましたが、今後は日本でFCCLが取り組んでいないけれど、レノボが海外で展開している製品やサービスを提供していくことを考えています。例えば周辺機器に関してはレノボの方が開発力や資金力が圧倒的ですので、当社がこれまで扱っていなかった周辺機器などを日本市場に提供していきます。

 またレノボ・グループとの人的交流については、FCCLからエンジニア2人をレノボ・ジャパンの大和研究所(横浜市みなとみらい)に出向させました。レノボのやり方を学んで、いずれはFCCLに戻ってきてもらい、レノボとFCCLの化学反応を起こす役割を担ってほしいと考えています。