文部科学省は2020年7月28日、ICTを活用した学校教育の柱となる学習者用デジタル教科書について検討を進める「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の第2回会合を開いた。

 7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)では「新たな日常」の実現として「義務教育段階の遠隔教育やデジタル教科書・教材の整備・活用を促進するとともに、デジタル教科書が使用できる授業時数の基準の緩和を検討する」と記載する。 初等中等教育改革を進め、「デジタル教科書・教材・コンテンツの開発・活用」などにより遠隔・オンライン教育を早期に実現するとしている。

 今回の会合では国公立小学校での授業実践について報告があり、「デジタル教科書と紙の教科書の利点」や「児童生徒の学びの充実に向けたデジタル教材等との連携」「児童生徒の『主体的・対話的で深い学び』の実現への寄与」などが検討された。

第一日暮里小学校の白井一之校長が報告した「学習ツールとしての学習者用デジタル教科書」の 算数を授業イメージ
出所:文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第2回)資料」

 荒川区立第一日暮里小学校の白井一之校長は、算数と社会科の実践を通じて「学習ツールとしての学習者用デジタル教科書」について考察した。同校では、富士通製のWindows 10パソコンを3年生以上に1人1台、1、2年生には2人に1台を整備し、電子黒板や教員用パソコンと一体運用している。

 学校内では無線LANが利用可能で、今のところは家庭への持ち帰りはしていないという。白井校長はデジタル教科書の利点として、画面を拡大表示することで詳細な図版を確認でき、デジタル教科書自体に直接書き込むことができるので教員が児童用にワークシートを用意しなくてよいなどの利便性を紹介した。また、紙のノートへの書き込みと同じように自分の考えを書き込めるだけでなく、簡単にやり直せる点や繰り返し試行錯誤できたり、解答を電子黒板に投影したり、ほかの児童と情報を共有したりできるという学習上のメリットを挙げた。

 デジタル教科書のメリットを挙げる一方で1教科1人当たり800円前後、コンテンツ付きで1500円前後の費用、デジタル教科書は通常1年のライセンス契約となっている点、各児童用の端末へのインストール作業を誰が行うのか、ビューワーアプリが教科書会社によってまちまちで煩雑なこと、高速な通信回線が必要なことなどをどう解決していくかなどが課題だとした。

筑波大学附属小学校の青山由紀教諭が報告した「小学校国語 デジタル教科書を活用して ‾効果・可能性と課題‾」の国語のデジタル教科書の活用例
出所:デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第2回)資料

 筑波大学附属小学校の青山由紀教諭は、国語の実践を通してデジタル教科書の可能性と課題を報告した。同校では40台程度のWindowsパソコンがICT教室に、学校全体でiPadが30台程度整備されているという。光村図書出版の国語の教科書を使った事例を紹介し、「紙の教科書を使うときは子供たちにいかに主体的に学ばせるか、デジタル教科書の場合は子どもたちの『分かったつもり』をどう防ぐかが重要で、『デジタル教科書』か『紙の教科書』か、という二者択一の議論に陥らないことが必要」(青山教諭)とした。

 意見交換の中では「現在のデジタル教科書はGIGAスクール構想の前のもので、長期的にはデジタル教科書についての定義を見直す必要もあるのではないか」などという意見も出た。

 有識者による検討会議は月1回開催され、来年夏頃に最終まとめを提示する予定だ。