GIGAスクール構想によるICT環境整備が進む一方、端末の活用法や教員のスキルなどが次の課題になっている。収束しないコロナ禍により、大学ではオンライン授業が続いている。こうした中、いかにしてICT活用を教育の質向上につなげるのか、大学におけるオンライン授業をどう評価するのか、萩生田文部科学大臣に聞いた。(聞き手: 江口 悦弘=日経パソコン編集長)

文部科学大臣 萩生田 光一氏
(写真:稲垣 純也)

──GIGAスクール構想で整備された端末活用のカギになるのが学習者用デジタル教科書ですが、紙の教科書と違い無償給与でないといった制度上の課題があります。

 教科書について「紙かデジタルか」という二項対立は全く望んでいません。一方で、財政的な課題があるので、全て我々の要求通りにというわけにはいかないでしょうが、紙にもデジタルにも良い面があるので、両方の「いいとこ取り」をして、最良の教育を子供たちに提供したいと考えています。例えば一つのアイデアとして、小学生でも低学年のうちは「教科書を持って読む」といった基本的な姿勢も大事なので紙の教科書を主に、ICT環境は補助的に使い、高学年になればその主従を逆にする方法もあるでしょう。

 紙の教科書は1人1冊ずつ必要ですが、クラウド配信のデジタル教科書はこれまでとは違う考え方ができるわけです。その点を踏まえ、教科書会社の皆さんとの協議の中で、どういう単価設定をしていくかが一つの大きなポイントになると思います。

 学習者用デジタル教科書を無償給与の対象とするか否かについては、紙の教科書とデジタル教科書との関係と併せて検討する必要があると考えています。文部科学省は2021年度から全国的な実証研究を進めており、その成果を基に、必要な制度の見直しをしていきます。

デジタルの新しい提案に期待

 教科書関係各社は、いろいろな知恵を出して良い教科書や教材を作るでしょう。我々の想像を超える効果を発揮できるものも、どんどん出てくるのだと思います。1人1台端末の環境が整い、デジタルの持つさらなる魅力や能力は目の前で使えるのに、あえて使わないということはすべきでないと思っています。

 誤解を恐れずに申し上げれば、全ての教科書会社がデジタル教科書を作れるとは限りませんし、今までとは全く違う企業が参入してくる可能性もあります。いま目の前にあるものだけ並べてどうするかと考えるのではなく、将来に向けて新しい提案がなされることも期待しながら、間口を広くしておきたいと思います。

──ICT活用教育には、これまでとは違った教員のスキルも必要です。教員養成課程の見直しや現職教員を対象にした研修など、国としての対応が必要ではありませんか。

 1人1台の端末があるからといって、先生方がこれまで培ってきた授業のやり方を全て変えることを求めているわけではなく、ICTはあくまでもツールとして使えばよいのだと思います。

 教員養成の段階においても教育職員免許法施行規則を改正し、教職課程においてICTを用いた指導法を必修化しました。その内容をさらに充実させるため、ICTに特化した科目の新設や大学において順次開設される数理、データサイエンス、AIに対応した科目を選択可能とするとともに、その習得を促すことなどについて中央教育審議会の議論を踏まえて検討を進めています。

 大学生はデジタル機器を使いこなしていますが、機械を使いこなすことと授業の中で学習者用デジタル教科書やICT機器をしっかり使うのとではレベルが違います。教員を目指す大学生には教職課程で勉強してもらいますし、現職の先生方がICTを活用して指導する力を身に付けられるように、独立行政法人教職員支援機構と連携して各地域でのICT活用に関する指導者養成研修を充実させていきます。研修はオンラインのオンデマンドで受けられるものも用意し、良い授業内容を全国に広めていきたいと思っています。