授業の基本は対面

──コロナ禍で広がったオンライン授業ですが、特に大学においてはオンライン授業やオンデマンド型授業のメリットがたくさんあります。大臣は大学での対面授業再開を求めてきましたが、その真意は?

 オンラインの良さを否定しているわけではありません。オンライン授業であれば、日本にいながらケンブリッジ大学やハーバード大学の授業を受けることも可能だと言われます。学生はオンラインのチャットだと質問しやすいという声もあります。

 もちろん、それはそれでよいのですが、リアルタイムで同じ教室に居て授業を受けていると、ほかの人の質問などに気付かされることはたくさんあります。人が何を言ったか、どんな意見があったかを聞けなかったとしたら、それは学ぶ機会を失っていることになります。ですから、やはり授業の基本は対面なのだと思います。その隙間を埋めたり、さらに上乗せをしたりするためのツールとして、ICTを大いに活用してほしいということです。

(写真:稲垣 純也)
(写真:稲垣 純也)
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自治体は教育データの蓄積を

──教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるには、教育データの利活用が重要です。国はデータ収集の仕組みやデータの扱い方に関するルール作りに乗り出すべきではありませんか。

 今まさにデジタル庁を作り、政府を挙げてデジタル化を進めていこうとしています。小中学校ではさまざまな教育ビッグデータを積み上げていくことが可能な環境になっています。しかし、プラットフォームをどうするか、データをどこに蓄積するかなど、まだ決まっていないところがあります。

 今すぐは活用できないとしても、後々、教育データが必要になったときに「あのときに取っておけばよかった」というような失敗がないように、今からしっかり備えてもらうよう各自治体にお願いしていきたいと思います。

 教育データの利活用に関わる仕組みやルールについてはさまざまな論点がある中で、データ利用と個人情報保護の両立を目指す政府全体の方針に歩調を合わせて検討する必要があると考えています。2021年4月には省内に教育DX 推進室を設置し、検討体制を整備しているところです。幅広い論点を同時並行で検討するとともに、まずはデータを現場で有効活用している取り組みの共有や教育データの標準化を進めます。

──政府が進めるデジタル化の中で、文部科学省としてはどのように連携していくのですか。

 文部科学省が率先して何か決めていくというよりは、国全体で大方針が決まると思いますので、まずは必要な教育データを取り損なうなどということがないように備えておき、さらに国の方針に合わせてブラッシュアップしていくという二段構えを考えています。

初出:2021年7月19日発行「日経パソコン 教育とICT No.17」