東北大学 大学院ラーニングアナリティクス研究センター(以下、LA研究センター)は2021年7月26日、キックオフシンポジウムを開催した。2020年12月1日にLA研究センターが設置されて以来、「LARC連続セミナー」と称して実施しているセミナーの3回目に当たる。

 キックオフシンポジウムでは、センター長である東北大学大学院 教授の堀田龍也氏がLA研究センターについて紹介したのに続き、基調講演としてラーニングアナリティクス研究の第一人者である京都大学 学術情報メディアセンター 教授の緒方広明氏が登壇。LAは情報学や教育学はもちろん、心理学、脳科学、AI(人工知能)など幅広い分野の研究者が携わっていることや、LAの基盤システムとして開発した教材配信システムなどについて話した。

 東北大学 大学院情報科学研究科が設置したLA研究センターは、こうしたキックオフシンポジウムの実施をはじめとして、これから本格的な研究活動を始める。センター立ち上げの中心人物である尾畑伸明氏に、設立の経緯と今後の取り組みについて聞いた。

──2020年12月1日にLA研究センターが設置されました。その経緯を聞かせてください。

 ラーニングアナリティクス(学習分析)の研究は教育分野だと思うのが普通です。実際は、どんな手段で教育データを集めるか、ビッグデータをどう統計処理して可視化するかといったように、自然言語処理、画像解析、センシング、統計、AI(人工知能)、教育学など幅広い学術分野が含まれます。ラーニングアナリティクスは、情報科学に新たな研究分野を作り出す可能性があると考えています。

 東北大学は、大学院情報科学研究科の中に心理学や社会学、教育学といった文系分野の研究者がそろっていて、裾野が広いことが特徴です。ラーニングアナリティクスは、そうした特色を生かせると考えました。そこにコロナ禍による授業のオンライン化が加わり、教育データを集めやすくなったことも設置の後押しとなりました。

 LA研究センターでは、文理横断的な幅広い知見を背景に、教育データの収集・分析・利活用を総合的に研究していきます。その中で、ラーニングアナリティクスとさまざまな分野の研究が相互作用することを期待しています。

──具体的にはどのような活動をイメージしていますか。

 例えばオンライン授業であれば、どのような映像や動画が効果的なのか、対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド化はどのようにするのがよいのかといった研究が考えられます。

 情報科学研究科には表情の解析などを研究している人もいます。授業中の学生の表情から学習の理解度を推定するといった研究も可能になるとみています。

全学として教育データを収集

──教育データの利活用に関わる方針やルールなどはあるのですか。

 全学的な取り組みとして、教育データを一元管理し、研究に利用します。将来的には学生にフィードバックして、学生自身の学習の見直しなどに役立ててもらうことも可能です。ただ、そのためには教育データの収集や利用法に関して全学的なコンセンサスやルールといった環境整備が不可欠です。

 そこで、2021年3月に「教育・学習データ利活用宣言」を公表し、併せて個人情報の取り扱いなどに関する教育・学習データ利活用ポリシーを定めました。2021年度から各学部の新入生オリエンテーションなどで説明し、データ収集の同意を得ています。ラーニングアナリティクスの研究には、部門や研究者単位ではなく、大学として教育データを集める方針を宣言することが重要です。

──今後の研究活動のロードマップなどはありますか。

 研究というのは、ロードマップができた時点で基本的な部分は終わっているとも言えます。現在はセミナーを実施し、ラーニングアナリティクスに対する先生方の理解を深めているところです。個別の研究をどう進めていくか、2年くらいかけていろいろと試していきたいと考えています。