「Society 5.0」とも呼ばれる高度情報化社会への転換点を迎える今、学校教育が大きく変わりつつある。2020年度から小学校におけるプログラミング教育必修化などを盛り込んだ新学習指導要領が全面実施され、政府は大学などでのAI(人工知能)人材の育成に力を入れている。こうした中、大阪市で開かれた教育総合イベント「第4回 関西教育ICT展」(2019年8月1日、2日)において、「AI時代の情報教育はどうあるべきか」というテーマでパネルディスカッションが開かれた。

 始めに「日経BP 教育とICT Online」の中野淳編集長が、情報教育に関する最近の話題と取り組み事例を紹介。政府がAI人事育成のため大学・高専で文理を問わずAIリテラシー教育を50万人に展開しようとしていること、AIが教育分野でさまざまな応用の可能性があることなどを示した。

大阪教育大学 理事・事務局長の新津勝二氏

 パネルディスカッションでは、まず大阪教育大学 理事・事務局長の新津勝二氏が登壇。新津氏は文部科学省の情報教育振興室長を務め、プログラミング教育必修化の施策に携わった。こうした経験と現在の立場から、「新学習指導要領は、学習の基盤となる情報活用能力の習得や教科横断的な視点に立った資質・能力の育成を盛り込んでいるので、まずは新学習指導要領を確実に実施することが大事」と強調した。大阪教育大学における対応としては、「最先端の技術を活用した新たな学びの提案をしていきたい。教員養成課程におけるICT活用教育の実践もしている」とした。

文部科学省が示した先端技術の活用方法
(出所:新津氏の発表スライド)

AI人材育成の取り組みが始まる

 続いて、関西大学 システム理工学部 学部長の田實佳郎氏は「ビッグデータを扱う研究で日本は中国や米国のトップランナーに比べて20周遅れ」と指摘。AIやそれに必要なビッグデータの研究分野における競争力低下に危機感を示した上で、「自動車や白物家電のような日本が強い分野でセンサーなどを起点にビッグデータを集めていく必要がある」と話した。関西大学では2020年度からシステム理工学部で「データサイエンティスト育成プログラム」をスタートする。その中で、パナソニックとの連携プロジェクトとして、AIやIoTの技術開発に関わるインターンシップを実施する。

関西大学 システム理工学部 学部長の田實佳郎氏
AIの活用には大量のデータが必要だが、日本はビッグデータを扱う研究分野で大きく遅れているという
(出所:田實氏の発表スライド)

 教員養成系大学である東京学芸大学は、大学院修士課程において、AIの教育活用をテーマにした「教育AI研究プログラム」を2019年度から開始した。同大ICTセンター 教育情報科研究チーム准教授の加藤直樹氏は、AI時代の人材育成について、「今の子供たちがみんなAI技術者になるわけではないが、AIでできることやICTを使えばもっと楽になるということを知っていることが大事。そういう教育ができるように、教員養成系大学も対応していく」と話した。

東京学芸大学 ICTセンター 教育情報科研究チーム准教授の加藤直樹氏
AI時代の教育には、情報教育やICTを活用した授業ができる教員が必要。そのために教員養成系大学に求められることは多い
(出所:加藤氏の発表スライド)