ICT(情報通信技術)活用教育に関する総合展示会「第4回 関西教育ICT展」が2019年8月1日〜2日の2日間、大阪市のインテックス大阪で開催された。会期中、大学ICT推進協議会(AXIES)と情報処理学会 一般情報教育委員会の協賛で大学の情報教育について議論するセミナーが開催された。

 大学生が社会に出て活躍するためには、ICTに関する知識、モラル、スキルの習得が欠かせない。高校での情報教育に続いて大学でもICT活用能力を身に付ける授業が実施されている。授業での課題の一つに、入学者身が身に着けているICT知識・スキルのレベルに差があるという点が挙げられる。情報プレースメントテストは、大学に入学する学生がどの程度のICT知識・スキルレベルを有しているかを判定する。情報処理学会一般情報教育委員会の構成員で科研費(科学研究費助成事業)を得て「情報分野における高大接続のためのプレースメントテストシステムの構築」に取り組み、テストに必要な知識・スキル体系を構築した。

セミナーの基調講演では、東京国際大学商学部教授の河村一樹氏が情報プレースメントテストについて解説した

 この研究の代表者であり、セミナーの基調講演「大学入学者の知識とスキルを測定する情報プレースメントテスト」に登壇した東京国際大学商学部教授の河村一樹氏によると、プレースメントテストは大学の情報教育において、能力別のクラス編成やカリキュラム作成などに活用できるという。

課題を抱える大学の情報教育

 講演に続いて開かれたパネルディスカッション「これからの情報教育について考える—情報プレースメントテストを受けて—」では、前述した科研費研究課題の研究分担者である京都大学 国際高等教育院教授の喜多一氏、同じく連携研究者である広島大学 情報メディア教育研究センター教授の稲垣知宏氏、北海道大学 情報基盤センター教授の布施泉氏が、各大学における情報教育の現状と課題について発表し、議論した。

 広島大学では、新入生向け授業の初回に情報プレースメントテストを実施し、1092名が受講した。稲垣氏は、大学における情報教育の授業について、「限られた授業時間の中で教えるべき範囲がどんどん広がっている。学生のレベルもさまざまで、多様で質を保証した授業が求められている」と指摘。さらに、「教材を買ってきただけでは全てはカバーできず、自前で用意するのは範囲の広がりの中で対応ができない。大学の情報の授業は難しい局面を迎えつつある」との見解を示した。

広島大学 情報メディア教育研究センター教授で情報教育研究部門長の稲垣知宏氏
大学における一般情報教育の現状と課題
(出所=稲垣氏の発表スライド)

 京都大学の喜多氏は、情報プレースメントテスト(プレIPT-2017)の結果について、「正答率にばらつきが大きい。そうした学生たちといかに向き合うかが一般情報教育の課題」との認識を示した。また、「そうしたばらつきを平準化するための自学自習の支援が必要であり、それを含めた大学の単位制度の実質化がカギだ」と述べた。

京都大学 情報環境機構 機構長で国際高等教育院教授の喜多一氏
情報プレースメントテスト(プレIPT-2017)では正答率のばらつきが多かったという。喜多氏は、「大学ではOfficeソフトの操作を教える必要はないという意見もあるが、学生はアカデミックな活動に必要なICTスキルは身に着けていない」と指摘した
(出所=喜多氏の発表スライド)

 北海道大学の布施氏は、同大学における実践事例「データベース」「プログラミング」「著作権」について紹介した。布施氏は、「著作権の学習は価値創出の教育の柱」だと考え、著作物を使って新しい作品を作り出す実践を学生にさせているという。また、学生に対するアンケート調査を受けて、「高校の授業でプログラミングを経験すると嫌いになる生徒が増える。プログラミングが嫌いという印象を持った学生の意識を変えさせるのは大変だろう」と分析。新学習指導要領でプログラミングなど新しい情報教育を受けた生徒が入学してくることについて、「大学側では新入生がどう変わるのかを把握して改善するサイクルを回すことが必要」と指摘した。

北海道大学 情報基盤センター メディア教育研究部門教授の布施泉氏
学生に対するアンケート調査によると、プログラミングは経験すると面白そうと思う生徒が増える半面、嫌いという生徒も増えるという