文部科学省が2020年7月下旬に刊行した2019年度「文部科学白書」では、学校ICT環境整備の状況やGIGAスクール構想の展望、先進事例などを紹介した。

 文部科学省は、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の施策を広く国民に紹介するため、文部科学白書を毎年刊行している。2019年度版では、教育におけるICT活用に多くの紙幅を割いたのが特徴だ。

文部科学省が2020年7月末に刊行した2019年度の「文部科学白書」。デジタル版は文部科学省のサイトからダウンロードできる

 特集記事では「教育の情報化〜GIGAスクール構想の実現に向けて〜」と題して、15ページにわたって、教育の情報化を取り巻く現状と政府の方針、関連施策、今後の方向性や自治体の取り組み例を紹介した。

 白書では、経済協力開発機構(OECD)が2018年度に参加国の生徒にICT活用について調査した「生徒の学習達成度調査(PISA)」において、学校外でのインターネットの利用時間はOECD平均を超える一方で、コンピューターを使って宿題をする頻度がOECD加盟国中最下位という結果を示した。

OECD加盟国のICT活用に関する調査(PISA2018)で、日本は学校でのコンピューターの使用頻度が加盟国中最低
出所:文部科学省「文部科学白書」

 同じくOECDが2018年に教員を対象に実施した「国際教員指導環境調査(TALIS:タリス)」でも、日本の教員が学校で生徒に課題や学級での活動に ICTを活用させる割合は20%未満で、TALIS参加48カ国中最下位レベルという結果を示し、特に学校でのICT活用が世界から大きく遅れている現状を紹介した。

中学校で生徒に課題や学級での活動にICTを活用させる比率も、日本は加盟国中最低レベル
出所:文部科学省「文部科学白書」

 こうした状況を受け、教育におけるICT活用の向上と情報化推進に向けて2019年12月5日に閣議決定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の中で、「初等中等教育において、Society 5.0 という新たな時代を担う人材の教育や、特別な支援を必要とするなどの多様な子供たちを誰一人取り残すことのない一人一人に応じた個別最適化学習にふさわしい環境を速やかに整備するため、学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進するとともに、特に、義務教育段階において、令和5年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指すこととし、事業を実施する地方公共団体に対し、国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講ずる」との方針を示した。施策の実現に向け、「GIGAスクール構想の実現」として2019年度補正予算に2318億円を計上している。

 2020年に入って新型コロナウイルスの感染拡大が進み、学校の一斉臨時休業が始まって新年度以降も混乱が続き、ICT環境整備の必要性が高まったことを受け、児童・生徒1人1台コンピューターの整備を今年度中に前倒し実施することが決まった。

 文部科学白書では、端末とネットワーク環境というハードウエア整備にとどまらず、デジタル教科書や教材など良質なデジタルコンテンツの活用を促進し、教員が日常的にICTを活用できる指導体制を築くための環境整備の重要性をうたっている。

児童・生徒1人1台コンピューターの環境を整備するための施策
出所:文部科学省「文部科学白書」

 GIGAスクール構想以外にも、今回の白書ではICTの活用を強く打ち出している。政府が目指す「Society 5.0」社会では、人工知能(AI)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられる。日常生活のさまざまな場面でICTを用いることが当たり前となっている子供たちが、情報や情報手段を主体的に選択し活用していくための基礎的な力としての「情報活用能力」を身に付け、情報社会に対応していく力を備えることがますます重要となるとしている。

 新しい学習指導要領では、情報活用能力の育成や教科指導におけるICT活用の推進と教員の指導力向上をうたい、プログラミング教育を実施する。今後はICTを活用した遠隔教育や校務の情報化推進がますます必要になる。こうした社会では、障害のある子供たちの支援や子供を有害情報から守るための取り組みの重要性も高まってくる。

 このほかにも、大学入試改革の現状や大学など高等教育の充実といったテーマについて詳細を掲載している。文部科学白書は冊子(税別1950円)の形態で7月末に刊行され、PDFファイルは章単位で文部科学省のWebサイトからダウンロードできる。