エビデンス駆動型教育研究協議会は2021年8月11日、「キックオフシンポジウム」をオンラインで開催した。シンポジウムには、国立情報学研究所 所長の喜連川優氏をはじめ、東北大学大学院 教授の堀田龍也氏、内田洋行 社長の大久保昇氏、文部科学省 教育DX推進室長の桐生崇氏らが参加し、それぞれの立場でラーニングアナリティクス(学習分析)についてプレゼンテーションした。

エビデンス駆動型教育研究協議会の事業内容
(出所:緒方広明氏の発表資料)

 エビデンス駆動型教育研究協議会(Research Council of Evidence-Driven Education、略称EDE)は、ラーニングアナリティクス研究の第一人者である京都大学 学術情報メディアセンター教授の緒方広明氏が代表理事を務める一般社団法人。「エビデンス駆動型教育の学術研究を推進・実践していくこと」を目的として、2021年5月25日に設立された。今回のシンポジウムが実質的な最初の活動になる。コンピューターを活用した授業の急速な広がりを受け、教育データの利活用とラーニングアナリティクス(以下、LA)が注目されている。EDEが掲げる「エビデンス駆動型教育」とは、そうしたデータ分析によるエビデンス(根拠、証拠)に基づいて実践する教育を意味する。

東北大学大学院 情報科学研究科 教授の堀田龍也氏は「初等中等教育におけるデータ駆動型の教育を目指して」というテーマで講演した

 LA研究では、東北大学大学院の情報科学研究科もラーニングアナリティクス研究センターを2020年12月1日に設置し、2021年度から本格的な活動を始めている。その所長を務める堀田龍也氏は、初等中等教育におけるLAへの期待として、いくつかの事例を挙げた。1つめは、小学校英語で授業前に実施する小テスト。児童は各自のコンピューターで前時の復習を兼ねたテストを受ける。結果は直ちに採点、集計されるため、児童は自分の理解度を認識でき、教員はすぐにクラス全体の分析ができる。堀田氏は「単純だがこういう手軽なところから始めてはどうか」と提案した。

デジタル教科書で学習者の操作を記録したログの例
(出所:堀田龍也氏の発表資料)

 もう一つ、東北大学と東京書籍などが東京都荒川区で実施した学習者用デジタル教科書の実証研究での成果も紹介した。算数や社会科のデジタル教科書で学習行動などの履歴を記録する取り組みだ。例えば、写真や図が拡大表示された回数を調べると、児童がどこに注目したのかが分かった。堀田氏は「こうしたデータを教科書会社にフィードバックすることで、教科書・教材の改善に役立つ」と説明した。また、教育データ利活用の課題として10項目を挙げ、それらの中でも特に「ミクロ的なデータである学習ログをマクロ的な成績データにどのよう変換、集約していくのかという研究が、これから非常に大事になる」と指摘した。

ページのどこを拡大したのか調べると、児童の関心や行動が分かる。学習の本題とは関係ない校舎の写真を拡大している児童が多く、改善の余地があると考えられる
(出所:堀田龍也氏の発表資料)