大教室は不要になる?

──コロナ禍を契機に学校のICT環境整備が進んだその先に、どのような教育があると考えますか。

 小中学校、高等学校までと、大学などの高等教育機関とは分けて考えた方がよいと思っています。

 ICTを上手に使いこなすことは大事ですが、小中学生は対面で学ぶ、集団で協力して活動するといったことがとても大事です。学校教育は机に向かって学習するだけではなく、行事のためにみんなで協力したり、時には嫌なこともやったりする中で学ぶことがあります。

 一方で高校生や大学生は、ある程度時間を上手に使うという意味では遠隔授業などの許容範囲を拡大していくことも、今後は検討してよいのではないかと考えています。

──大教室で遠くの黒板を眺めているだけの授業は無駄で、キャンパスに来なくてもオンラインで授業を受ければ十分でしょう。

 そうですね。数百人収容できるような大学の講堂は、もう必要なくなるのかもしれません。逆に、学生のみなさんに個別に合わせた授業ができるようになったら、小規模の教室をたくさん持った方がよいのではないでしょうか。まさに、アフターコロナの大学、高等教育機関の在り方は大きく変わっていくと思います。

スパコンを小中学生にも

──GIGAスクール構想によるICT環境整備は新型コロナウイルス感染症対策として今後も役に立つでしょう。そういう意味では、新型のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」も新型コロナの治療薬候補を探す研究などに使われ始めました。

 はい、スーパーコンピューターの富岳は、すでに飛沫の飛散シミュレーションなどで感染予防に役立つ成果を挙げています。富岳は世界のスーパーコンピューターの性能ランキングである「TOP500」をはじめとする国際ランキングで第1位を獲得しました。本格運用は2021年度からなので、富士山の登山に例えれば7合目か8合目なのにチャンピオンになれました。これが頂上まで行ったときは、さらなる強みを世界に発信してほしいと思っています。

 大学間をつなぐ高速通信網の「SINET」は小中高等学校に開放します。そうすると、小中学生と富岳がつながることも可能になるので、次世代スーパーコンピューターの持てる力を子供たちが体感できるような授業も展開してほしいです。

■初出:日経パソコン 教育とICT No.13(2020年7月20日発行)

地方財政措置: 文部科学省は「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」に基づき、単年度1805億円の地方財政措置を講じている
SINET(サイネット): 国立情報学研究所が運営する100Gbpsの高速通信網