コロナ禍で開いたDXの扉

 皮肉なことに、新型コロナウイルス感染症は人々を苦しめたが教育DXの扉を開いた。4年計画で整備されるはずだったGIGAスクール構想はオンライン授業に対応するため前倒しされ、2021年3月末の時点でほとんどの自治体で小中学生1人に1台のコンピューターが配備された。大学の授業は全面的にオンライン化され、デジタル教材を配信するプラットフォームであるLMS(学習管理システム)の利用率が飛躍的に伸びた。コロナ禍が強制的にICT環境を整備させた格好だ。

 こうした下地づくりで可能になったのが、教育データの収集と利活用だ(図3)。デジタル化した教材やLMSなどから収集した学習履歴、操作履歴、テスト結果などのデータは、分析することによって指導方法や教材の改善、学習者個人に合った学習方法の選択、教育政策の立案などに役立つ。これが、先の提言でうたわれているデータ駆動型教育だ。

●コロナ禍を契機に教育のデジタル化を進められるか
●コロナ禍を契機に教育のデジタル化を進められるか
図3 コロナ禍をきっかけにICT環境整備が進んだ。これを、デジタルのメリットを生かした新しい教育につなげられるか。この数年が勝負になる
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 大学における授業のオンライン化は、決まった時刻に全員が教室に集まるという制約を取り払い、学生に多くの恩恵をもたらした。海外も含めた大学間の連携やリソースの共有も可能にし、複数の大学間でオンライン授業を共通化するといった動きも出ている。

 日本の教育現場は、初等中等教育、高等教育を問わずデジタル化が遅れていた。OECDの調査において学校でのコンピューターの活用機会がダントツの最下位だと、しばしば指摘されてきた。ところが、コロナ禍によりICT環境整備が急激に進み、一気に世界の先頭に立てるチャンスが巡ってきた。何よりも、教育DXによって授業に変革がもたらされ、児童・生徒、学生はより良い教育を受ける機会が与えられる。せっかく開いたDXの扉をいつの間にか閉じてしまわないよう、教育DXをどのように進めたらよいのか、教育関係者全員が正しく理解し、議論を深めていくことが望まれる。

初出:2021年7月19日発行「日経パソコン 教育とICT No.17」