「『大学は対面授業中心に正常化へ』ということは、オンライン授業は異常だというのか」。東京大学 情報基盤センター センター長 教授の田浦健次朗氏は、国立情報学研究所のシンポジウムにおいて、ある新聞記事の見出しに抱いた違和感を訴えた。

 萩生田光一 文部科学大臣は、再三にわたり大学の対面(面接)授業再開を求めてきた(図1)。オンライン授業の良さに理解を示しつつも、学生たちが教室に集まって同時に授業を受けることに意義があるという考えだ。これに対応してか、各大学は2021年度から対面授業中心に戻す方針を示していたが、結局は新型コロナウイルス感染症の再拡大でオンライン授業が続いている。

●「授業は対面が基本」と話す大臣
図1 萩生田光一文部科学大臣はオンライン授業のメリットは認めつつ、「授業の基本は対面」と話す

 確かに、大学の授業が全てオンラインになり、学生がキャンパスに入れない事態は異常だ。学生と教員が集まってやり取りする授業が基本というのも、その通りだろう。だからといって、コロナ禍が去ったら何もかも元通りにすればよいのだろうか。田浦氏は、東京大学でいち早くオンライン授業を開始するために奔走し、学生の学ぶ機会を確保した。1年間の実践を通じて、オンライン授業には課題があるものの、学生にとってメリットが多いことが分かった。

 多くの大学教員や実際に授業を受けた学生が挙げるオンライン授業のメリットを図2にまとめた。単に通学やキャンパス間の移動にかかる時間を削れるだけでなく、距離の制約がなくなることで、海外を含む他大学の授業や著名な研究者の講義を受けられるようになる。実際、東京大学は2021年3月、海外大学の教員が東京大学の教員としてリモートで教育研究活動に参画できる制度を開始した。

●オンライン授業のメリットは不利益を上回る
図2 1年あまりの実践で明らかになったオンライン授業、オンデマンド型授業のメリットとデメリット。オンライン授業は万能ではないが学生にメリットが多く、課題の多くは技術や運用の改善によって解決可能だ