「分からない」が分かる

 ラーニングアナリティクスで授業や指導方法を改善すると言っても、具体例がないと分かりにくいだろう。いくつかの例を図5にまとめた。

●ラーニングアナリティクスで分かることを次の授業に生かす
●ラーニングアナリティクスで分かることを次の授業に生かす
図5 LAによって分かることは多岐にわたる。重要なのは、分かったことを学習者の役に立つような行動へつなげることだ
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 例えば、紙の教科書の場合、学習者が教科書をどこまで、どのように読んだのか、何を書き込んだのかを教員が知ることは難しい。一方、履歴記録機能があるデジタル教科書を使うと、読み進めたページ数、ページごとの閲覧回数と時間、マーカーを引いた箇所、書き込んだメモ、練習問題の結果などのデータが得られる。それらを適切な方法で分析すれば、学習の進度や速さ、学習中に難しいと感じたところ、重要だと考えた箇所などが分かる。

 クラスの中で多くの学習者が難しいと感じたところが明確になれば、教員はそこをより丁寧に教えることができる。授業についてこられない学習者が多い場合は、ペースや時間配分に改善の余地があると気付く。

 学習者の動作や発話回数、視線などからは授業への集中度を推測できるし、心の不調を発見できる可能性もある。教員の目が届かないところで問題が深刻化する前に、適切な支援や対応ができるようになると期待されている。

 一つ具体例を見てみよう。図6は、出された課題への取り組み方を分析した結果だ。生徒によって、コツコツ取り組む、期間の序盤に終わらせる、復習する、途中で力尽きるといった行動の傾向が見て取れる。学習履歴とテスト結果を結び付けて分析すると、「復習する学習者の成績が良く、取り組む時期の違いは成績との相関性が低いことが分かった」(緒方氏)という。ラーニングアナリティクスによって、当然だと感じていたことにエビデンスが得られたり、反対に常識だと思われていたことが覆ったりすることもある。

●課題への取り組み方を分類
●課題への取り組み方を分類
図6 デジタル教材の学習履歴を分析した例。学習者の取り組み方を可視化、類型化して成績情報と結び付ければ、効果的な学習方法が見つかる可能性がある(出所:京都大学 学術情報メディアセンター教授 緒方広明氏「教育データの利活用のための仕組みづくり」)
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