リアルタイム性は武器

 ラーニングアナリティクスが従来の方法に対して特に大きなアドバンテージがあると考えられるのが、(1)授業中でもリアルタイムにフィードバックできる(2)学習の過程から将来の成績などを予測可能という点だ。

 ラーニングアナリティクスを使わなくても、従来の小テストや期末試験などで学習の進度や理解度は測れる。しかし、ラーニングアナリティクスは教員に学習者の状況をリアルタイムで伝え、授業中に指導方法を改善することさえ可能にする。数日から数カ月間隔でしか把握できない従来の方法に比べ、圧倒的に即応性が高い。

 九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授の島田敬士氏は、デジタル教材配信システムとリアルタイム学習ダッシュボード機能を統合した独自の環境を構築し、授業に生かしている(図7)。授業中に学生が教科書のどこを閲覧しているかがリアルタイムに表示され、教員の説明に対して分かったか分からないかといった反応も把握できる。学生が閲覧しているページと教員が示しているページの差をチェックすると、授業のペースが速いか遅いかが分かる仕組みだ。

●オンライン授業中に学生の行動や反応を表示
●オンライン授業中に学生の行動や反応を表示
図7 九州大学大学院 教授の島田敬士氏が構築したリアルタイム学習ダッシュボードの画面。左のグラフは横が時間、縦がページ数で、教員が説明しているページを学生も開いているか分かる(出所:島田敬士氏「リアルタイム学習分析によるオンライン授業支援」)
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学生の行動変容を促す

 ユニークなのは、リアルタイム学習ダッシュボードを学生にも開放しているところ。島田氏は「オンライン授業で学生はほかの人の様子が分からないことで不安を感じていた。そこで、ダッシュボード機能を学生も使えるようにした」と話す。これまでなら横を見れば、みんなが教科書の何ページを開いているか分かったが、オンライン授業では皆目分からない。ダッシュボード機能があるとそれが分かり、ほかの学生が教科書にマーカーを書き込むと、それにつられて書き込む学生も多いという。

 島田氏はこうした学生の行動について、「教科書に書き込みが多い学生は成績が良いという研究結果がある。ならば、そうした行動を取るように学生を誘導するのが効果的。ダッシュボード機能を使うことで学生に対して教科書に書き込むという行動変容をもたらし、それが試験前の復習などで役立ち、成績も良くなる。こうした循環をラーニングアナリティクスで作り出すことが大事だ」と力説する。

 2021年3月に結果が発表された「教育データ解析チャレンジコンテスト」では、1万人以上の学習行動データから参加各チームが予測モデルを構築し、学習者100人の成績を予測した。こうしたことができるようになれば、学習者に対して「今のままの学習方法では及第点を取れません」とシステムが注意を促したり、教員が早めに声掛けをして学習者の行動を変えたりできるだろう。