ベネット氏が2社のトップを兼務するようになって2年余りたつ。
マーケットで競合することもある両社を束ねることでどう変わったのか。

──レノボ・ジャパンとNEC パーソナルコンピュータ(以下、NECPC)の社長を兼務するメリットと両社の強みは何でしょうか。

 両社の社長に就任して以来、私が心掛けてきたのは、世界のトレンドを日本に持ってくるのではなく、日本市場にフォーカスした製品・サービスを提供することです。社長の兼務は、両社の強みを生かした事業展開ができることもメリットです。グローバルな事業を展開するレノボのスケールメリットや新しいテクノロジー、NEC PCの品質へのこだわりなど、両社の特徴をうまく組み合わせることで、お客様の多種多様なニーズに対応できます。

 国内市場が主力のNEC PCはもちろん、レノボ・ジャパンでもパソコンの研究開発から生産、物流、サポートまで国内でできる製品を持っていることも強みと言えます。これにより、お客様が期待する短い納期や迅速なサポートが可能です。日本の市場特性に合わせ、皆さんが欲しくなるような製品づくりを進めれば、必ず売れると確信しています。

──さまざまな製品分野で日本市場は特殊と言われますが、パソコンも同じですか。

 世界のマーケットは最も安価なクラスのパソコンが売れるのに対し、日本は安いだけではダメです。海外でモバイルノートパソコンは軽いことより薄いことが重視されますが、日本では薄さより軽さや頑丈さなど付加価値の高い製品が求められます。

 例えば、NEC PC の「LAVIE Pro Mobile」は13.3型でありながら堅牢・軽量で、高解像度カメラを搭載するなど、テレワークに適しています。レノボ・ジャパンの「ThinkPadX1 Carbon」なども、テレワークに適した高性能なカメラやスピーカー・マイクを搭載し、国内の需要を拡大しています。

──そのテレワークでパソコン需要が伸びています。

 コロナ禍でテレワークやオンライン学習が広がり、パソコン需要が好調なのは確かです。タブレット端末はネットや動画の閲覧といった「コンテンツの消費」には便利ですが、仕事や勉強などクリエーティブな作業にはパソコンが適しています。

 私は以前から、働き方改革、教育、ゲーミングの3つが日本市場のカギを握ると言ってきました。これまで日本の企業はテレワークなどのIT投資にあまり積極的ではありませんでした、そこで、もっとテクノロジーにお金をかけるべきだと。パソコンを活用してビジネスのデジタル化を進めれば、世界と互角に戦えるようになるでしょう。

 テクノロジーの重要性は教育も同じです。文部科学省が「GIGA スクール構想」で全ての小中学生にコンピューターを整備すると言っています。これには大賛成です。パソコンがあれば、子供たちはどこにいても平等に学べます。

 そこで、教育向けのパソコンを拡充しています。OSはWindowsとChrome OS、CPUはIntelとAMD、通信機能はWi-FiとLTEといったように選択肢を増やし、教育委員会などの多様なニーズに応えています。

 ゲーミングPCは高性能なGPUを搭載しており、ゲームはもちろん、オンライン会議でも威力を発揮するなど、テレワークにも適しています。

──テレワークやGIGAスクール構想は、いずれ需要が一段落します。その先はどうなりますか。

 まだ見えていない新たな需要が生まれると期待しています。今のテレワークは大手企業が中心ですが、今後、働き方改革が進めば中小企業にも広がる可能性があります。GIGAスクール構想も小中学校だけでなく、高等学校でも同様の動きが広がるかもしれません。オンライン会議やオンライン学習のように、パソコンがコミュニケーションツールとして日常的に使われれば、「一家に1台」から「1人に1台」になるでしょう。あらゆるニーズに対応できるよう、私たちも変化していかなければならないのです。

── NEC PCとレノボはどのように変化していくのですか。

 NEC PCでは、これまでにない製品づくりに力を入れ、新たな挑戦を始めています。例えば、「LAVIE Direct N15」は8コアの特別なCPUをAMDに作ってもらい、ハイスペックなノートパソコンとして売り出したところ、予想以上に好評です。

 レノボでは、インテリジェンス革命と言っていますが、社会や企業のデジタル革命が進む中で、お客様のさまざまな課題を解決するため、ハードだけでもソフトだけでもなく、サービスを含めたエンド・ツー・エンドのソリューションを提供していきます。

(聞き手:江口 悦弘=日経パソコン編集長)

デビット・ベネット氏
David Bennett
1979年生まれ。カナダで大学院を卒業後、早稲田大学 日本語教育研究センターで日本語を学ぶ。日本AMDを経てレノボ・ジャパンに入社。現在は同社と傘下のNECパーソナルコンピュータの社長を兼任する。日本の大学院で古典文学を研究し、日本語は堪能。最近は日本語を題材にした本も出版した。

初出:日経パソコン2020年9月14日号