この1年間で、「教育データ」や「ラーニングアナリティクス(LA)」という言葉を耳にする機会が増えた。ICT活用教育の研究分野で、いま最もホットな話題だ。日本学術会議は2020年9月に「教育のデジタル化を踏まえた学習データの利活用に関する提言」を発表した。それからおよそ1年後の2021年10月17日、日本学術会議は公開シンポジウム「教育データの利活用の動向と社会への展開」をオンラインで開催。基調講演には経済産業省の浅野大介氏*1、文部科学省の桐生崇氏*2、国立教育政策研究所 総括研究官の白水始氏らが登壇し、教育データの利活用に対する国の取り組みなどを紹介した。

*1:経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課長・教育産業室長、デジタル庁統括官付参事官
*2:文部科学省大臣官房文部科学戦略官 総合教育政策局教育DX推進室長

埼玉県学力・学習状況調査で蓄積したビッグデータと各学校が保有する教育データをAIで分析し、個別最適な学習と教員の支援を目指す
埼玉県学力・学習状況調査で蓄積したビッグデータと各学校が保有する教育データをAIで分析し、個別最適な学習と教員の支援を目指す
(出所:埼玉県教育局市町村支援部義務教育指導課 主任指導主事 藤井真仁氏の発表資料)
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 続く研究事例発表では、先端的な教育データ利活用の研究が紹介された。教育データを利用したラーニングアナリティクス(学習分析)の事例はまだ少なく、貴重な事例発表だったので、いくつか紹介しよう。

 埼玉県が取り組む実証研究では、県独自の学力・学習状況調査(県学調)などで得た教育データをAI(人工知能)で分析し、児童・生徒への個別アドバイスや教員向けに学校別のアドバイスをフィードバックすることを目指している。分析にはソニーコンピュータサイエンス研究所のAIを使い、県学調の問題間のつながりを可視化する。テストの誤答を追っていくことで、つまずいたポイントを特定できるだけでなく、他教科と関連したつまずきポイントも分かるという。

教育データの分析結果は「個別アドバイスシート」として児童・生徒にフィードバックされる
教育データの分析結果は「個別アドバイスシート」として児童・生徒にフィードバックされる
(出所:埼玉県教育局市町村支援部義務教育指導課 主任指導主事 藤井真仁氏の発表資料)
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 京都教育大学附属桃山小学校は、日本ユニシスと実証研究を進めるAIテキスト分析システムを紹介した。グーグルのチャットボット機能とAIによるテキスト分析を組み合わせ、児童に個別最適な学びを実現しようというユニークな試みだ。

「AI Chatbot」とテキストマークアップによる学習支援。チャットボットとAIテキスト分析を組み合わせたシステム
「AI Chatbot」とテキストマークアップによる学習支援。チャットボットとAIテキスト分析を組み合わせたシステム
(出所:京都教育大学附属桃山小学校 副校長 桑名良幸氏の発表資料)
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 児童が文章を入力してAIチャットボットに解析してもらうと、ほかの児童が使っているキーワードを教えてくれたり、出現頻度のランキングが示されたりする。それを見て、自分の文章に足りない点などを認識できる。教員の方では、特定のキーワードを使っていない児童のピックアップし、適切な指導をするといったことが可能だ。こうした分析結果が授業中にリアルタイムで得られ、即座に生かせるところがICT活用の強みだ。

児童が入力した文章が解析され、キーワードの頻度やランキングが表示される
児童が入力した文章が解析され、キーワードの頻度やランキングが表示される
(出所:京都教育大学附属桃山小学校 副校長 桑名良幸氏の発表資料)
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