日本教育工学協会(JAET)は2019年10月18日〜19日、「第45回 全日本教育工学研究協議会全国大会 島根大会」を開催した。雲南市内の公立学校における公開授業をはじめ、ICT活用教育に関する研究発表やワークショップなどが行われた。

 宍道湖の南に位置する雲南市にある市立西日登小学校は、全校生徒数が33人という小規模校。ここでは5年生と6年生の複式学級による算数の授業が公開された。5年生は単元「正多角形の円周と長さ」でプログラミングに取り組み、6年生は単元「資料の調べ方」で表計算ソフトを活用する。この2つの授業を1人の教員が同時に進めるという挑戦的な内容だ。

手前が6年生、奥が5年生のクラス。2つの授業を同時に進める。授業担当は関野恵愛教諭

子供たちが統計手法による違いに気付く

 6年生の授業では、図書の貸出目標と実績を比較し、目標に対して順調に推移しているかどうかを判断する。そのためのツールとしてマイクロソフトの「Excel」を使う。貸出数の一覧から自分たちで数値を入力し、最大値と最小値、最頻値(散らばり)を調べる。

児童たちは2人一組のグループに分かれてExcelを使う。2人で相談しながらさまざまな分析を試みていた

 例えば、あるグループは全体と学年の平均値を出し、目標値に届いているかどうかで判断した。ほかのグループは、児童1人が借りている冊数をグラフ化し、何冊借りている層が多いのかを可視化することで判断していた。分析の仕方によって「順調」だったり「あまり順調ではない」といった具合に判断が分かれた。つまり、貸出実績という同じデータであっても、統計手法によって結論が変わることに気付いたわけだ。

鉛筆をくくり付けたロボット教材「Codey Rocky」(ケニス)をプログラムで走らせると、紙の上に正多角形が描かれた

 一方の5年生のプログラミングでは、ビジュアルプログラミングで正多角形を描いた。プログラミングソフト上でうまくできたら、次にロボット教材を使って実際に正多角形を紙に描いた。プログラムで制御できる自走式のロボットに鉛筆をくくり付け、大きな紙の上を走らせると正6角形が描かれ、子供たちは達成感を得ているようだった。

複式学級ならではの授業進行

 西日登小学校での公開授業では、小学校におけるICT活用授業として、ほかであまり見られない特徴が2つあった。

 一つは、複式学級の授業で児童たちが自主的に学びに向かっていく姿が見られ、それが「高学年のプログラミングと情報活用の授業を同時に進める」という難しいチャレンジを可能にしたこと。2つの授業が同時進行するため、教員は5年生と6年生の間を行き来しながら直接指導と間接指導をしていく。児童に自主性が全くなければ成立しないが、6年生はExcelで分析を進め、5年生は助言を受けながらも自分たちでプログラムを作成していた。この際、6年生の授業では児童の一人が学習リーダーになり、発表を促したり、発表の手助けをしたりして、自主的に授業を進めていた。こうした学習リーダーの設定は、特に複式学級の授業では有効だと感じた。

6年生の学習リーダーは、電子黒板に投影したワークシートに印や文字を手早く書き込み、発表内容がみんなに分かるようにサポートしていた

 Excelを使った6年生の算数では、同じデータでも分析方法によって違った見え方になることを、自分たちの手を動かすことで発見した。公開授業を指導した和歌山大学大学院 教育学研究科 教授で、教職開発専攻 専攻長の豊田充崇氏は、「同じ数字や事実であっても、統計の手法や情報の捉え方によって異なる見方ができることと、それがニュースや統計発表など、世の中に多くあることに気が付いてくれるといい」と授業を振り返った。さらに「プログラミングと統計教育を組み合わせ、統計をプログラムで自動化するといったデータサイエンス領域の教育ができる可能性があると考えている」と語った。

一連の授業指導に当たった和歌山大学大学院 教授の豊田充崇氏が公開授業後に講評した

芭蕉の句を題材に掘り下げて学習

 雲南市立木次中学校では、2年生の数学科(寺本幸平教諭)、3年生の国語科(鎌田晋也教諭)、3年生の理科(郷原伸司教諭)の授業を公開した。同校は、1年生が3クラス、2年生と3年生が各2クラス、特別支援学級が3クラスで、生徒数は201人。2018年に大型提示装置を備えたICT教室を3クラス整備し、33台のタブレットPCを導入した。

 国語科の授業では、松尾芭蕉の紀行文「おくのほそ道」を題材に、俳句が読まれた土地について紹介する「旅プラン」を作成してプレゼンをした。教員は予め8つの俳句を選び、その句に関連した画像を用意している。生徒は、2人で一組になって、タブレットPCを使ってプレゼン資料をまとめ、ほかの生徒に対して発表した。「スライドの作成を通じて興味を持ち、1つの句を掘り下げて学習することができた」(鎌田教諭)という。

俳句が読まれた土地について紹介する「旅プラン」の構成例。プレゼンに使う画像は、旅行ガイドをスキャンするなどして、授業前に教員が用意した
生徒はタブレットを使って、句が読まれた場所について調べながらプレゼン資料をまとめた。発表の構成や要点などをまとめるワークシートも使って学習した
プレゼン資料は、Skyのソフト「シンプルプレゼン」を使っている。シンプルプレゼンは、スライド数やスライド1枚当たりの写真の枚数、入力する文字数などの上限を設定できるのが特徴
プレゼンの様子。プレゼン後に、ほかの生徒からの指摘を反映して、発表資料を修正・加筆した