日本教育工学協会(JAET)は2019年10月18日〜19日、「第45回 全日本教育工学研究協議会全国大会 島根大会」を開催した。会期中に開かれたワークショップ「AIによる授業のアクティブ度の把握と指導改善」では、授業映像の分析結果を活用する方法について、研究発表を見ながら参加者が議論した。

 この授業は、東京学芸大学 教育学部准教授の高橋純氏、大阪教育大学大学院 連合教職実践研究科 特任講師の板垣翔大氏、日本ユニシスが協力し、東京学芸大学附属小金井小学校で実施した実証研究の一環。

授業の様子を撮影した映像をAIが分析し、児童の感情を推測する。グラフは数分間の時系列データで、全体を通して「ニュートラル(中立)」が多く、時々「悲しそう」が現れる

 映像の分析は、児童の「感情」と「動作」の2種類。感情の分析では、児童たちの表情をAIが分析して「幸せそう」「悲しそう」「驚いている」などの感情を推測する。児童の顔の上に「happiness」や「sadness」などと表示され、どんな感情なのか把握できる。さらに、時間軸でグラフ化すると、幸せそうな表情の児童が増えたり、悲しそうな児童が現れたりする様子が分かる。

骨格認識による行動分析の様子。映像をAIが認識し、児童たちがどんな動作をしているか判定する。この場面では多くの児童が振り返って発言者を見ている

 もう一つの動作分析では、児童たちの頭、肩や腕などの動きをAIが認識し、「手を挙げる」「後ろを向く」「筆記している」といった動作を判定する。これにより、授業中の児童たちの行動を客観的に捉えられる。児童たちの様子は、教員なら見ていれば分かりそうなものだが、ワークショップに参加した教員はAIが分析する様子を見て、「目立つ行動をしている子がいると、どうしても注目してしまう。AIは全体的に多くの児童の行動を認識できるところがすごい」と感心していた。

AIが児童の骨格や関節の動きを分析し、腕を高く上げていれば「挙手」だと判定する

 AIによる映像(動画)分析技術は急速に進歩しており、顔認識、表情分析や年齢推定、行動解析などはビジネスに応用され、一般的になりつつある。しかし、教育現場での活用はこれからだ。特に児童・生徒の個人情報保護に関わる問題が立ちはだかり、実証研究も容易ではない。東京学芸大学の高橋氏は、「今回の実証のために全ての児童の保護者から承諾を得た」と明かす。そうした意味で、今回の実証研究は貴重なデータだろう。

 AIは学習の個別最適化や授業改善に役立つ場面が数多く想定される。高橋氏は「教員がクラスを指導していく中で、児童たちの行動がどう変わっていったのかを客観的に知ることにより指導方法の改善に生かせる」とみている。

東京学芸大学 教育学部准教授の高橋純氏