日本教育工学協会(JAET)は2019年10月18日〜19日、「第45回 全日本教育工学研究協議会全国大会 島根大会」を開催した。ICT活用教育に関する研究発表やワークショップ、公開授業などが行われた。

 2020年度から小学校において新学習指導要領が全面実施され、プログラミング教育が必修になる。準備は進んでいるものの、小規模自治体を中心にまだ準備が整っていないところもある。今大会の研究発表でも、小学校プログラミング教育に関する発表は多く、聴講者を集めていた。

 町田市立小山中央小学校の古屋一希教諭、八王子市立城山小学校の原田篤翼教諭、帝京大学 教授の福島健介氏ら6人は、プログラミング教材の特性を分析した研究結果を発表した。教材の分析結果は下の表の通り。教材によって向き、不向きがあることが分かる。例えば、「プログル」(みんなのコード)のような設定された課題を解いていくタイプの教材は、設定通りに使えば目的を達成できる。その半面、児童が自ら課題を設定したり、プログラミングを通じてさまざまな表現をしたりするのは難しい。逆に「Scratch」(MITメディアラボ)や「Sphero SPRK+」(Sphero)は自由度が高く、多様な授業展開が考えられる。

論文で発表したプログラミング教材の分析結果。教材やツールは非常に多く、選定が難しい。教材によって特徴が異なるため、身に着けさせたい能力や授業展開を考えて選ぶ必要がある
(出所:発表論文「プログラミング教育における教材の特性分析—ねらいに即した教材の選択—」)

 プログラミングに自信がない現職の教員にプログルとSphero使ってもらい、聞き取り調査もした。「どちらを使いたいか」という質問に対して、教員は全員がプログルを選んだという。前述のように、Spheroは自由度が高い代わりに教材研究が必要なので、プログラミングに不慣れな教員は選びにくいようだ。

聞き取り調査では、プログラミングのスキルがない教員は、教科に合わせて課題が設定されたプログルが使いやすいと感じている

 プログラミング教育で先行する学校や自治体からは、一段階進んだ実践や提案の発表もあった。千葉大学教育学部附属小学校の小池翔太教諭は、ソニーの「MESH」を使い、児童が地域飲食店の課題を解決する授業カリキュラムを発表した。小池氏は、新学習指導要領解説にある「地域の事象を取り上げ、それらを実際に解決していく過程が大切」という部分に着目。IoT的なプログラミングができるMESHの特性を生かした授業を実施した。

千葉大学教育学部附属小学校の5年生が、IoTを活用して地域飲食店の課題を解決する活動を実践。MESHの人感センサーやスピーカーのブロックを使い、店の前を人が通るとしゃべる「まねき猫」を考えた

 尼崎市立塚口小学校の井上幸治教頭と尼崎市立立花西小学校の山岡正明教諭は「小学校における『情報科』の設定の提案」と題し、立花西小学校における情報科の取り組みを紹介した。各学年の各学期に1回の授業を設定し、6年分の系統表に基づいて機器の基本的な操作スキル、プログラミング、情報モラルを学ぶ。「情報科」と称して、あえて教科の枠に入れない情報教育に特化した授業を実践している点でユニークだ。

尼崎市立立花西小学校における「情報科」の系統表

普通教室でのインクジェット複合機の活用状況を調査

 埼玉県美里町立松久小学校の野澤博孝教諭は、小中学校の普通教室に複合機のプリンターを設置した結果について発表した。この研究では、小中学校9校にエプソンのインクジェット複合機29台を設置。2019年4月から7月にかけて、複合機の活用目的や利用頻度などを記録して集計、分析した。

 それによると、プリンター1台当たりの印刷枚数は平均で3676枚、コピー数は同2011枚、スキャン数は同512枚。プリンターによって、活用頻度に差があった。平均的な利用頻度の場合で、1年間に1台当たりにかかるインク費用(用紙代は含まず)は約2万4000円になると試算した。活用目的では「授業関連」が49.6%(469件)を占め、活用した時間帯は「短い休み時間」が23.4%(221件)だった。野澤教諭はこの結果から、「職員室まで行かなくてもプリントやコピーができることは大きなメリットで、3カ月間で約10時間の時短につながる」と分析した。

2019年4月から7月のプリンター1台当たりの活用状況。小中学校9校の普通教室に29台のインクジェット複合機を設置して調査した
1年間活用した場合のインク費用は1台当たり約2万4000円になると試算した。用紙代は含んでいない
複合機の活用目的は「授業関連」が最も多く49.6%を占めた
短い休み時間での活用が3カ月間で221件あったことから、「約10時間の時短につながる」と分析した