2020年10月23日と24日の2日間、教職員や教育関係者に向けて「第25回 New Education Expo」(以下NEE)が開催された。2020年は25周年の節目だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で展示会は行わず、オンラインセミナーだけの開催となった。

 10月24日の講演で、茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校の毛利靖校長と東京都荒川区立汐入小学校の川上晋校長が、「GIGA時代に校長が語る! 児童生徒1人1台PC環境整備と効果的なICT活用」と題して、ICT環境の効果的な導入方法と学びへの活用事例を紹介した。

 GIGAスクール構想により児童・生徒1人1台のコンピューターと校内ネットワーク環境の整備が進む中、ICT環境をどう効果的に教育に活用するかについては現場の教員だけでなく、学校長の果たす役割は極めて大きい。

つくば市立みどりの学園義務教育学校

 みどりの学園義務教育学校は2018年4月に開校した。小中学生が9年間で子供の発達段階に応じて系統的カリキュラムを実践する公立の義務教育学校だ。ICT導入を積極的に進め、プログラミングやSTEAM教育などを行うほか、小学校1年生から英語教育、アクティブ・ラーニング、SDGs教育を実践する。

みどりの学園義務教育学校では、ICTを活用したカリキュラムを実践するグランドデザインを定めた
出所:NEE「GIGA 時代に校長が語る! 児童生徒1人1台PC環境整備と効果的なICT 活用」の講演

 毛利靖校長は「校長には学校のグランドデザインを作る権限がある。今の教育の全てにICTの活用が必須ということに気がつき、本校のグランドデザインを考えた」と話す。

 公立校の同校ではICT活用に慣れていない教員も多かった。しかし、学校全体で積極的に利活用を促すことで、開校1年でICT活用度が教科によっては前年の4倍近くになった。開校時に中学1年生(7年生)だった生徒の学力も、学力調査の比較で2年の間に大幅に向上したという。

 同校では、授業の中でも教員がタブレット端末を使って大型ディスプレイに画面を表示した授業を実施し、生徒にも積極的にタブレットPCを使わせている。児童・生徒に対するアンケート調査でも「勉強ができるようになった」という回答が91%あり、ICTを積極的に活用したことで子供のやる気が向上したとしている。

 新型コロナウイルスの感染症対策では、2020年4月からオンライン学習を実施した。教員自ら500本以上の動画を作成し、自宅学習できるようにするなど、教職員がICTを利活用する割合は他校を大幅に上回っている。

主体的・対話的で深い学びを実現するには、全員授業参加型のアクティブ・ラーニングを進めることが重要という
出所:NEE「GIGA 時代に校長が語る! 児童生徒1人1台PC環境整備と効果的なICT 活用」の講演

 毛利校長は「一部の教員が特定の教科でICT活用するのではなく、全職員が全教科でICTを活用し、できる範囲で協力しながら実践して日常使いすることが重要だ。主体的・対話的で深い学びを実現するには、児童・生徒がICT機器を使っていくことが必要」と話した。

荒川区立汐入小学校

 汐入小学校の川上晋校長は、普段から児童・生徒に自由にパソコンなどの端末を使わせるという考え方を実践してきた。荒川区は東京で最初にタブレットPCの実質1人1台の体制を整備した。2014年の「荒川区タブレットPC活用指針」では、導入初期は「『普段使い』を進め、タブレットPCに慣れ、必要な時にすぐに使える状況を確立する」と定めている。

 学校でコンピューターの普段使いを進めるには、端末へのアカウント設定、授業での利用、保管庫への設置から充電まで、児童全員ができるようになるのを待ってから先に進むのではなく、できる児童が分からない児童に教え合うなど、助け合う体制を築くのが重要だ。コンピューターを特別なものとして扱わず、日常の道具に変えていくのが「普段使い」の秘訣だという。

川上校長は、「input」「organize」「output」「archive」「skill」というキーワードを基に、児童・生徒に「情報活用能力」を取得させることが必要と話す
出所:NEE「GIGA 時代に校長が語る! 児童生徒1人1台PC環境整備と効果的なICT 活用」の講演

 川上校長は、教員が情報活用能力の「情報入手」(input)、「整理・比較」(organize)、「発信・伝達」(output)、「保存・共有」(archive)、「基本的な操作」(skill)という5点を理解し、ICT環境の利活用を進めていくことが必要だと話した。

 GIGAスクール構想では学校に大量のコンピューターが配備され、1人1台の端末をどのように児童に割り振るか、端末とユーザー管理が重要になる。不具合や故障時の対応、使い方の研修やソフトのインストールなど、学校でICT活用を進める上で、ICT支援員やICT活用教育アドバイザーの役割はますます重要になる。

 GIGAスクール構想の下で学校のICT利活用を進めていくには、共有スペースや図書室などでコンピューター端末を自由に使える場所を用意し、普段使いを進めていくとよいと、川上校長は提案した。