2021年5月、エビデンス駆動型教育研究協議会が設立され、8月から本格的な活動を開始した。その代表理事であり、ラーニングアナリティクス研究の第一人者である緒方広明氏に設立の狙いを聞いた。

[画像のクリックで拡大表示]

──エビデンス駆動型教育は、従来の教育と何が違うのでしょうか。

 これまでの学校教育は教員の経験や勘に頼っているところが大きかったと思います。エビデンス駆動型の教育は、そうした教員の知見にエビデンス(証拠、根拠)も加えるという考え方です。例えば医療の分野では、以前からどんな薬や治療法に効果があるのか、臨床試験などを通じて得られたエビデンスを基に治療がされてきました。それと同じように、教育の分野でも「こういう授業をすれば、こういう効果があるのではないか」というデータの蓄積によって教育方法を考えていくのがエビデンス駆動型教育です。

 GIGAスクール構想で児童・生徒に1人1台のコンピューターが整備され、教育環境は大きく変わりました。この環境では知見の蓄積がなく、これまでの経験が通用しない部分が出てきます。そこで、「ICTを授業でどう活用するのが効果的か」といったことは、データを集めて分析し、得られたエビデンスを全国の教育現場で共有していく必要があります。

──今回、エビデンス駆動型教育研究協議会(以下、EDE)を設立した狙いは?

 教育データを集めるには、学校や教育委員会、行政、企業などの協力が必要です。そうした協力体制の起点となる組織が必要になったのが設立の理由です。EDEの目的は、教育ビッグデータから得たエビデンスに基づく教育の研究を推進、啓もうすることです。

 2021年8月にキックオフシンポジウムを開催し、10月には教育データの利活用に関する公開シンポジウムも開きました。今後は、 教材配信システム「BookRoll」とLMS、データ分析ツールなどを含む「LEAFシステム」を普及させ、得られたエビデンスを広く一般に公開し、教育の変革に役立ててもらいたいと考えています。

*LMS: 学習管理システム

日本は教育データを比較しやすい

──GIGAスクール端末の整備によって、学習履歴などの教育データを集める基盤ができました。

 GIGAスクール構想は海外から注目されています。日本は初等中等教育において学習指導要領という統一した教育課程の下で授業をしている点で、教育データの利活用によるメリットが大きくなります。というのも、全ての児童・生徒が同じ教育課程の下で授業を受けているため、データやエビデンスの比較や共有がしやすく、全国で活用できます。米国のように州ごとに違う場合、そうはいきません。

 ラーニングアナリティクス(学習分析)では、例えばAIドリルのような個別最適な学びが期待されています。それはもちろんよいのですが、大事なのは自律的、主体的に学ぶ児童・生徒、学生を育てることだと思っています。先生から宿題や課題を出されたから勉強するのではなく、自分が分からないところをもっと勉強しようと自律的に行動するようになってほしい。そのために、ラーニングアナリティクスやエビデンスが役に立つはずです。

初出:2021年10月18日発行「日経パソコン 教育とICT No.18」