2021年10月19日、インテルは限られた報道関係者を招き、社長の鈴木国正氏、執行役員常務の土岐英秋氏らとの懇談会を開いた。この場で鈴木氏は、教育分野での同社の取り組みについてSTEAMを中心に語った。

 鈴木社長はかねて教育分野に強い関心を持ち、「日本の学校教育は諸外国に比べてIT化が遅れている」との危機感を募らせている。インテルとして教育分野にも力を入れて取り組んでいくとしており、埼玉県の戸田市立戸田東小学校・同中学校が開設した「STEAM Lab」を支援した。

* STEAM:科学・技術・工学・芸術・数学を組み合わせた文理横断型の教育概念

インテルの支援で「STEAM Lab」を開設した戸田市立戸田東小学校には、文部科学大臣の末松信介氏が視察に訪れた
インテルの支援で「STEAM Lab」を開設した戸田市立戸田東小学校には、文部科学大臣の末松信介氏が視察に訪れた
(出所:文部科学省の発表資料)
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 同社は、これと同様のSTEAM Lab環境による教育を実証研究する学校を募集している。実証研究では、パートナー企業と協力してパソコンや周辺機器、アプリなどを提供し、STEAM教育の授業カリキュラムを開発・実践する。鈴木氏はその狙いについて、「インテルにとってすぐビジネスに結びつくことを意図しているのではなく、教育界がデジタル化するためのサポートをしていくことで大きなトレンドを作っていきたい」と説明する。

インテルは2021年10月23日から「STEAM Lab」の実証研究校の募集を開始した。研究期間は2022年4月から2年間。Webサイトから応募できる
インテルは2021年10月23日から「STEAM Lab」の実証研究校の募集を開始した。研究期間は2022年4月から2年間。Webサイトから応募できる
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 教育分野でのこうした支援は評価されるが、インテルが世界的な大企業であっても、民間の企業1社ができることには限りがある。STEAM Labのような取り組みも、全国的に広がらなければ教育の底上げにはならない。これに対して鈴木氏は、「1つの企業による支援できることに限りがあるのはその通りだが、良い取り組みがあれば自治体がお互いに隣を見ていく中で競争的に広がっていくのではないか」と指摘する。

 実際、戸田市の実証研究はさまざまな場で発信され、注目されている。鈴木氏はSTEAM Labの拡大について、「インテルの周りにはたくさんのパートナー企業が作るエコシステムがある。STEAM教育の領域に、社会貢献や企業ブランディングなどの狙いも含めて参入する企業はたくさんあるだろう。それらによって全国の自治体にSTEAM教育への取り組みが広がれば、市場に参入する企業が増え、エコシステムとして機能するようになる」との考えを語った。

インテルの教育に関する取り組みについて語る鈴木国正社長(写真中央)
インテルの教育に関する取り組みについて語る鈴木国正社長(写真中央)
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 鈴木氏はインテルを「中立的な立場にある企業」と表現している。同社の中核事業の一つであるCPUは、その上で複数のOSが稼働し、OS上では無数のアプリが動作する。ある種のインフラを提供しているとも言える。実際にインテルが中立でオープンな企業であるならば、今GIGAスクール構想で必要とされている教育データを蓄積するためのプラットフォームの提供で貢献できるのではないか。さらに、教育ビッグデータを解析して教育行政に生かすため、データ解析の技術やソフト、データセンターといったリソースの提供も考えられる。今後、インテルが教育分野にどれだけ本気で取り組むのか注目だ。