文部科学省は2020年8月7日、「JAPAN e-Portfolio(ジャパン・イー・ポートフォリオ)」の運営団体である一般社団法人教育情報管理機構の運営許可を取り消した。これによりJAPAN e-Portfolioのポータルサイトは9月11日に停止し、高校生がシステムに登録していた個人情報やポートフォリオデータは削除された。大学入試改革の柱の一つとして主体性等を評価する仕組みは、1年あまりで消滅した。

運営許可要件を満たさず

 文部科学省は「大学入学者選抜改革推進委託事業」において、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性等)」を大学入試で評価する方法を研究する事業を外部に委託。大学入試などで利用できるツールとしてJAPANe-Portfolio(以下、JeP)の仕様が作られた。その仕様を基に開発されたのがJePのポータルサイトで、2017年10月に運用を開始した(図1)。

●JAPAN e-Portfolioと大学、高等学校、民間事業者の関係
図1 JAPAN e-Portfolio(JeP)を利用する大学は会費を払って会員になる。JePに連携して事業を営む民間企業は賛助会員になって会費を払う。同機構はこれらの会費で運営する。一方、高校生は無料で使える

 JePは生徒の個人情報を扱い、大学入試にも使われるため、強固なセキュリティと安定的な運用が必須条件。このため、運営団体は審査を受けて文部科学省から運営許可を得る。文部科学省の委託事業終了後、教育情報管理機構(以下、管理機構)が運営許可を得てポータルサイトの運営を引き継いだ。ところが2020年8月7日、管理機構が要件を満たしていないとして運営許可が取り消されてしまった(図2)。

●JAPAN e-Portfolioを巡る主な動き
図2 2019年4月に教育情報管理機構がJAPAN e-Portfolioの運営を引き継いだ際、それまでの参画大学を引き継げなかったことが後々まで響いた

責任の押し付け合い

 破綻の主な理由は運営資金の不足だ。会員大学数は2019年度の予算より一桁少なく、収入は予算比でマイナス8600万円あまりとなり、決算は赤字に陥った。これでは安定的な運営を続けられないと判断されても仕方がない。

 これに対して管理機構は、5月に財源確保のため高等学校からの会費徴収と、賛助会員の会費値上げを中心とする改善策を示した。これに反発したのが全国高等学校長協会だ。6月に文部科学大臣に宛てて、管理機構の財源確保策に反対する文書を出している。文部科学省もこの案には難色を示した。

 では、会員大学が集まらなかった原因は何か? 機構側は「委託事業終了時点で113校が参画していたにもかかわらず、事業継承が認められなかったためゼロから募集する必要があった」ことが、主な原因だと主張している(図3)。さらに、その後も「文部科学省が特段、大学数の参加促進策を講じなかった」ため、会員大学が増えなかったという。

●運営許可取り消しを巡る両者の主張
図3 文部科学省と教育情報管理機構の主張には対立する点もあるが、JAPAN e-Portfolioを入試に活用する大学が少なく、機構に参加する大学が増えなかったことが事業破綻の主な原因という認識では一致している

 これに対して文部科学省は、国の委託事業と民間の一般社団法人が運営する事業は別で、委託事業の参画大学をそのまま移行することはできないという見解だ。大学の参加促進策を講じてこなかった点は認めつつも、民間の法人に対して特段の配慮をするのは公平性の観点からできないと説明する。

 どちらの言い分も間違いではない。だが、責任の押し付け合いをしている点で両者は同じだ。しかも、失敗の本当の原因を明らかにしていない。

甘い見通しと行政の論理

 高等学校におけるeポートフォリオ活用は一部にとどまり、一般的にはなっていない。さらに根源的な問題として、eポートフォリオを使って主体性等を入試で評価すること自体、短期間で合否を決める一般入試にはなじまない。一般入試で活用されなければ、会員大学は増えない。高校でも大学でもeポートフォリオに対する理解や活用の機運が高まらない中、主体性等を評価するという大義名分の下、JePを入試に広く利用しようとしたことが間違いだった。

 こうした状況にありながら、2019年度に大学の会員300法人、データ利用大学数200校という計画は非現実的。そんな甘い見通しを立てたのはなぜか。文部科学省 高等教育局大学振興課 専門官の小川優氏は、「結果としては甘い見通しだったと言われても仕方ない。実証事業では100校以上が参画しており、各大学には多面的・総合的な評価などについて通知も出していることから、2019年度には参画大学が増えるとみていた」と説明する。

 しかし、2019年度の会員大学が34校と低迷していた時点で文部科学省が各大学に参加を促すこともできたのではないか。これに対しては「主体性等を評価する方法はJAPAN e-Portfolioだけではない。調査書や独自の評価方法を採用している大学もある。JePはそうした選択肢の一つであり、使うことを強制できない」(小川氏)という。

 行政機関の理屈としてはその通りだとしても、JePを成功させて主体性等を評価する入試改革を本気で成功させようというなら、公的な機関で運営するなどの方法もあったはずだ。