2021年11月1日、NEC、NTTコミュニケーションズ、内田洋行、スタディプラスの4社は、各社が運営する教育機関向けプラットフォームが「学習eポータル」に対応し、文部科学省のCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」と接続すると発表した。それに伴い、学習eポータル標準モデルを開発したICT CONNECT 21は同日に自治体向け説明会を開催し、前述の4社が学習コンテンツを無償提供するキャンペーンなどを紹介した。
学習eポータルは各種教育向けクラウドサービスの入り口として機能する。学習eポータル自体は具体的なサービスではなく技術的な仕様であり、どんな事業者でもサービスを開発して提供できる。今回発表した4社は、各社の教育機関向けプラットフォームに学習eポータルが規定する機能を持たせた形だ。実際には、学習eポータルに必要なシングルサインオン(SSO)、教材や学習ツールとの連携、学習履歴の保存といった機能は以前から備えている。このため、ユーザーである児童・生徒や教員から見える変化は、MEXCBTへの接続と一部のサービスにおいて無料で使える学習コンテンツが増えたことくらいだ。
ユーザーから見ると変化は少ないが、教育データの利活用に向けた取り組みの一環としては、学習eポータル対応の意義は大きい。学習eポータルは、国際的な技術標準を採用して相互運用性を高めている。例えば、デジタル教科書・教材やLMS(学習管理システム)、各種学習ツールとの接続にはLTI(Learning Tools Interoperability)を使う。接続部分が標準化されることにより、学習者が利用する教育プラットフォームから教材などをシームレスに利用でき、学習内容などの履歴情報を保存できる。
技術標準で相互運用が高まり利用者の利益に
学習履歴もxAPIという技術標準にのっとって記録されるため相互運用性があり、対応したツールであればどれを使っても可視化や分析ができる。ラーニングアナリティクス(学習分析)を教育に活用するには重要なポイントだ。今回の説明会で講演と対談に登壇した東北大学大学院 教授・東京学芸大学大学院 教授の堀田龍也氏は、学習eポータルの意義について、「教員がエビデンスに基づいた指導や保護者への説明をするには、子供たちがさまざまな学習に取り組んでコツコツと努力してきたことが分かる情報が欠かせない。それには1つの教材の情報だけでは不十分で、複数の教材のログが必要。それができるところに学習eポータルの価値がある」と話した。
LTIに対応することで教材や学習ツールが特定のプラットフォームに依存する度合いが低くなり、学習者は利用するプラットフォームにかかわらず自由に選んで学習できるのがメリットだ。教材などのベンダーにとっても、教育プラットフォームごとに個別の対応をする必要がなく、より多くのユーザーを獲得できる可能性が高まる。「クラウド配信であれば、これまでコンテンツの流通過程で取られていた手数料が減り、ベンダーの粗利は増えるはず」(NTTコミュニケーションズ スマートエデュケーション推進室 担当課長の稲田友氏)という見方もある。