2021年秋時点、日本国内のコロナ禍は沈静化の動きを見せているものの、コロナ対策を交えた教育現場のICT活用の動きは止まらない。オンライン授業をはじめとして、生徒1人に1台の端末を持たせて授業を行うなど教育現場が大きく変化。緊急事態宣言からの1年余りの試行錯誤の結果、ICT活用の道筋は少しずつ見えてきた。

 そうしたノウハウを共有するため、2021年11月8日から始まるオンラインイベント「教育とICT Days 2021 Autumn」(主催:日経BP)では、GIGAスクール構想、大学教育におけるICT導入事例、著作権の考え方など幅広いテーマで専門家が講演する。

GIGAスクール構想の実装における課題は

 「GIGAスクール構想は、保護者にまだまだ浸透していない」と切り出すのは、11月8日(月)の初日に講演をする奈良教育大学教職大学院 教職開発講座の小﨑誠二准教授だ。GIGAスクール構想が目指す新しい教育、つまり、児童や生徒に1人1台の情報端末を持たせて、ネットワークを活用した教育はどうあるべきかという課題に切り込む。またその新しい教育に必要な「学力の三要素」と「教員の資質」についても解説する。

 1人1台端末の時代の教育の在り方について別の角度から迫る講演もある。イベント最終日となる11月12日(金)に登壇する中村学園大学教育学部の山本朋弘教授は「教育をDX化していくと、授業モデルそのものが変化していくはずだ」と話す。山本教授は「GIGAスクール構想の導入期には、教育方法や授業の形態を変えないまま、ICTを活用して効率化や価値の向上を図ろうとしてきた」と解説。

 今後は、中学校の生徒総会をネットワーク上で実施したり、校長が自らクラウドサービスを用いて全校生徒からアンケートを取ったりといった実例を基に、これまでの常識にとらわれない活用方法を模索する必要があると山本教授は訴えかける。

教育現場のDX化に取り組む道筋と課題

 全学生がBYOD(Bring Your Own Device)環境で授業を実践するなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む大阪工業大学。マイクロソフトの「Teams」を活用したオンライン授業と対面授業のハイブリッド化による学習効果について、同大学ロボティクス&デザイン工学部の井上明学部長が11月11日(木)に講演する。

 井上学部長は、(1)300人規模の授業(2)プログラミング演習科目の対面+オンラインハイブリッド授業(3)30人程度のオンライングループワーク(4)10〜20名の少人数ゼミという4種類の授業形態において、BYOD×Teamsでどのように授業を進めていくのが効果的なのかを解説。大学教育を例にしているものの、初等教育における「GIGAスクール構想」の在り方への理解も深まる内容だ。

 ネットワーク化したICT基盤を整備したことにより、教育現場ではインターネットなどの知識や創作物を気軽に参照できるようになった。利便性が急激に高まった一方で、知らずに著作権を侵害しているケースも出てくる。11月10日(水)、11日(木)に講演をする岐阜聖徳学園大学教育学部の芳賀高洋教授は教育と著作権に関するオーソリティ。「教員が著作権に対してどう対応すればよいか、それを自分でどう考えればよいのか」について講演する。

 芳賀教授によると「著作物を利用するときには、著作権者にその都度、許諾を得ることが原則」だという。「学校の授業において一定の要件の下で著作物を無許諾で複製できる」と定める著作権法第35条について解説しつつ、著作物利用の際のチェックリストも交えて分かりやすく解説する。

 「教育とICT Days 2021 Autumn」では、ここで紹介した以外にも、「GIGAスクール構想の実現に向けて、次のステップ」(文部科学省 大臣官房 学習基盤審議官の茂里毅氏)や、「大学のIT部門のありかた〜大学ICT推進協議会の活動から得られるもの〜」(早稲田大学教授、大学ICT推進協議会会長の深澤良彰氏)のほか、多数の講演が行われる。受講は無料なので、ぜひ参加いただきたい。