ICT活用教育に関する総合展示会「第5回 関西教育ICT展」が2020年10月29日、30日の2日間、大阪市のインテックス大阪で開催された。10月29日には、「これからの教育機関に求められる『AI基礎教育』の進め方」と題したセミナーが開催された。

 国は大学・高等専門学校で、全ての学生を対象に「AI教育」を導入する方針を打ち出している。必要な人材やノウハウが不足する中で、教育機関はどのようにAI教育を進めていけばよいのか。関西学院大学 学長補佐 理工学部情報科学科の巳波弘佳教授と日経BPコンシューマーメディア局の中野淳局長補佐が、先行事例を紹介しながら効果的なAI教育を提供するための方法やポイントを解説した。

セミナーは、関西教育ICT展の会場で開催。関西学院大学の巳波弘佳教授は、ネット経由で登壇した

 セミナーではまず、中野局長補佐が政府が推進するAI人材育成について説明。内閣に設置された統合イノベーション戦略推進会議や有識者によるAI戦略実行会議で、大学・高等専門学校で文系・理系を問わず、AIリテラシー教育を卒業者全員に当たる50万人に展開する目標を掲げていることや、大学・高専でのこの分野の教育プログラムを認定する制度が2020年度に始まる見込みであることなどを紹介した。

 

 また、「数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム」によるリテラシー教育のモデルカリキュラム策定の取り組みについて触れ、全国の大学・高専にとって、こうしたカリキュラムの整備が課題であると指摘した。

国は2025年をめどに、大学・高等専門学校で文系・理系を問わず、卒業者全員に当たる50万人にAIリテラシー教育を実施することを目指している
出所:文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度検討会議」

 こうした政策面を背景に、巳波教授は関西学院大学の実践例として、文理横断型のAI活用人材育成について紹介した。巳波教授は、AI人材は世界中で大幅に不足しており、「世界では80万人が不足」(中国テンセント「2017グローバル人工知能人材白書」)、「日本でも2030年には55万人不足」(経済産業省「IT人材需給に関する調査」)することを指摘し、世界中でし烈なAI人材の争奪戦が起き、このままでは日本の若者が世界の潮流から取り残されるとの懸念を示した。

 

 巳波教授はAI人材に必要なのは、高度な数学やプログラミング・ビッグデータなどの分析といった「理系のスキル」だけで良いのか、という問題意識を提示した。AIを活用した新サービスや新製品の企画、顧客ニーズの把握は、技術者やAI開発者だけでなく、一人ひとりの特性を生かしていく必要があるという。また、AIに関わる人材を、研究所などで新技術などの研究を進める「AI研究・開発者」、実際の社会で使えるようにシステムを開発したりデータを分析したりするシステム技術者やSIerなどの「AIスペシャリスト」、AIを活用したサービスや製品を企画・提供する「AIユーザー」に分類。「文系・理系を問わず、AI・データサイエンス関連の知識を持ち、それを活用して現実の社会課題・ビジネス課題を解決する能力を有する人材」を「AI活用人材」と位置付け、この中心となるAIスペシャリストとAIユーザーの育成が必要だと訴えた。

巳波教授は、現実の社会課題・ビジネス課題を解決できる「AI活用人材」の育成を訴えた
出所:関西学院大学の巳波教授の講演資料(以下同じ)