熊本県の熊本市教育委員会と熊本大学教職大学院は2020年11月8日から15日まで「Kumamoto Education Week 2020」(KEW2020)を実施した。「より良い教育を通じてより良い社会を創る」という目標を学校と社会が共有し、共に考えていくことを目的としている。今回が初めての開催で、地域の教育の現状や新しいICT教育のあり方を紹介したり議論したりした。

 11月13日に開会のあいさつをした熊本市教育委員会の遠藤洋路教育長は「熊本市の教育大綱では、豊かな人生とより良い社会を創造するために自ら考え、主体的に行動する人を育むとしている。これを踏まえてイベントのテーマをWell beingを実現するための教育とした。地方都市の熊本から発信する教育イベントを、さまざまな分野のステークホルダーが作り上げ、世界の教育に貢献するグローバルなものにしていきたい」と意気込みを話した。

 実践報告として、まず熊本市立北部中学校の生徒が「未来を生きる私たちに必要な力とは?」と題して実践を発表した。同校では学校目標を「人とつながる、社会とつながる、未来とつながるESD」としており、より良い近未来社会を作るために必要な学びとしてESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)について発表した。

 同校では、将来に向かって夢の実現のために必要な力として「レジリエンス(耐性力)」「コミュニケーション能力」「情報活用能力」といったキーワードが出たという。「新型コロナウイルスの感染拡大で学校休業が起きたことなどから、逆境にも適応するというレジリエンスというキーワードなどが出てきたのではないか」などと話した。同校では、自分の苦手なことを見つける「課題発見能力」と、苦手を解決する「課題解決能力」が重要としている。この2つの能力を身に付けるための学校目標が「人とつながる、社会とつながる、未来とつながるESD」だという。

北部中学校の生徒たちと、講演内容について講評した経済産業省の浅野大介氏(画面右)
出所:KEW2020のYouTube配信画面

 北部中学校の実践報告に続いて、経済産業省の商務・サービスグループ サービス政策課長兼教育産業室長の浅野大介氏が「STEAM教育と未来の教室」と題して講演した。浅野氏は、教育の場は将来「いいシゴトをする」ための習慣を育む場であるべきとし、(1)当事者性を持つ(2)新しい価値、今より良い状態を創る(3)さまざまなジレンマを超克する、という3つが重要だとした。これはOECD(経済協力開発機構)の「OECD Education 2030」が示す3本柱の本質であり、未来の教室プロジェクトの方向性と合致しているという。

 未来の教室は、特に初等中等教育とリカレント教育の改革に焦点を当て、教育イノベーションを推進する実証プロジェクトとしてスタート。2020年度は5カ年計画の3カ年目に当たる。「学びのSTEAM化」と「学びの個別最適化」を改革コンセプトとし、「創る」と「知る」が循環する仕組みを考えている。

EdTech導入補助金は、2020年度に68件が採択され4303校に導入された。経済産業省では、2021年度も予算化に向けて概算要求をするという
出所:KEW2020でYouTube配信画面より

 2020年度は新型コロナウイルス感染症対策もあって、経済産業省の教育イノベーション関係予算は53.1億円に達した。学校がEdTechサービスを試験導入できる「EdTech導入補助金」に31億円(2019年度補正、2020年度補正予算の合計)、1人1台端末の活用先進事例の創出になる「未来の教室」実証事業に22.1億円(2019年度当初予算、2020年度補正予算の合計)で、2021年度も予算化に向けて36.6億円を概算要求しているという。

EdTech導入補助金によるEdTechサービスの都道府県別の導入状況
出所:KEW2020のYouTube配信画面より

 EdTech導入補助金に関しては、2020年7月22日の受付期限までに90件(企業・コンソーシアム数)、4449校(のべ5280校)の申請があり、このうち68件(企業・コンソーシアム数)が採択され、4303校(のべ5071校)にEdTechサービスが導入された。小中高等学校の導入比率は、5:3:2だったという。実際に導入した成果は「未来の教室」通信というニュースレターを今後発行して詳細を報告し、全国3万6000校の学校や自治体の教育委員会などに向けて広報して購読希望を募るという。

STEAMライブラリーは、2021年3月からの供用開始に向けて、既に多くのコンテンツが採択されている
出所:KEW2020のYouTube配信画面より

 「学びのSTEAM化」については、米国の公共放送ネットワークのPBSが提供する「PBS Learning Media」を参考モデルに、経済産業省主導で「STEAMライブラリー」を開発していく。単に動画や資料のデジタルアーカイブを提供するのではなく、学校の壁を越えた生徒の協働的で深い学びを助け、教員も研究者も企業も交わる、双方向的な探求活動を支えるプラットフォームを目指すという。このSTEAMライブラリーは、2021年3月から供用を開始し、モニターとなる教員や学校を募集して、活用事例の創出・普及を進める予定だ。