授業の様子が丸見え

 授業のオンライン化は、さまざまな領域に影響を及ぼす。教室の中で閉じていた授業が、インターネットに載ることで開示されたことも、その一つだ。千葉工業大学の小川氏は「教員の教え方という分野はある種の聖域だったが、オンライン化でチェックできるようになった。例えば、本学のディプロマポリシーに合った授業になっているのかといった確認ができる」と説明する。

 授業の様子が白日の下にさらされたことで、教員の教育内容には、これまで以上に厳しい目が向けられることになる。当然、「誰が教えても同じ」と評価されるような授業は、オンデマンド型のオンライン授業に置き換えられていく可能性がある。

 距離の制約を受けないオンライン授業は、大学外から多様なインテリジェンスを取り入れられる。名古屋大学の藤巻氏は「大学の教員が国内にいる必要はないし、海外の著名な先生に講義をしてもらうことも視野に入れられる。東南アジアやオセアニアの大学と連携できないか検討を始めている」と明かす。東京大学の大久保氏は「AI教育のように大学で教える人材が少ない場合、オンラインなら民間企業の専門家に授業をしてもらいやすい」と指摘する。

 これまでも企業の専門家を招いて講義をしたり、オンラインで他大学と交流したりといった取り組みはあったが、オンライン授業の環境が整ったことで、こうした動きが加速しそうだ。

 ハイブリッド型の授業が広がれば大学のキャンパスも変容を迫られる。法政大学の廣瀬氏は、「今のような数百人を集める大教室は要らなくなるかもしれない。一方でグループワークは教育効果が高いので、そうした作業に使える空間がより多く必要になる」と考えている。学生が構内でオンライン授業を受けられる環境の整備と併せ、大学の施設や設備を見直していく契機になるだろう。ただし、それには多大な費用がかかる。感染症対策にかかるコストも含め、国からの支援を望む声は多い。

DXができた大学が生き残る

 コロナ禍で広がった大学のオンライン授業は、授業の形ばかりか、大学教員や施設の在り方まで考え直す契機になった。社会でデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれるのと同様に、大学にもデジタル化による変革が必要だろう。青山学院大学 副学長の稲積氏の「マスプロ教育をオンラインに置き換えることで効率化を図りながら教育全体のクオリティーを上げていく。そうした大学が評価されていくと思う」という言葉は、今の大学が置かれている状況を端的に表している。

 ハイブリッド型の授業やオンデマンド型のデジタル教材など、教育のデジタル化によって非効率なところをなくし、そこに使っていた人的リソースや予算を、教育効果が高い演習やアクティブラーニングに振り向けていく(図11)。これからの大学と教員は、ICTを活用して教育の質を高めていけるかが生き残りのカギになる。

●効率化と再配分で教育の質を向上
●効率化と再配分で教育の質を向上
図11 オンライン授業も含めたICT 活用授業のイメージ。コロナ禍をきっかけにして社会がDXの推進に踏み出したように、大学の授業も今が大きく進化するチャンスだ
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