対面授業を再開したが以前の形には戻らない
東京大学 理事・副学長(教育・学生支援担当) 大久保 達也 氏
東京大学 理事・副学長(教育・学生支援担当) 大久保 達也 氏
 しばしば「なぜ大学生だけが学校に行けないのか」と批判されますが、小中高等学校はコロナ禍が終息しない中、ICT環境が整っていないためオンライン授業を十分に導入できず、対面授業の再開を急がねばなりませんでした。一方で、大学は安全にオンライン授業を導入できました。

 東京大学では3月から準備をして、4 月からオンライン授業に取り組んだのは正しい選択でした。感染症対策を取りながら学生の学びを滞らせることがなかったことを誇りに思っています。オンライン授業では、板書を見せるだけでなく、授業を一から再構築した先生もいました。そうしたグッドプラクティスを後期の授業に生かすことが大事です。

 学生の成長には、教員や友人と対面で交流する機会が不可欠です。2021年度も基本的には対面とオンラインの併用になります。対面授業を再開しましたが、全く元通りになるのではなく、戻る所にはICTの活用があります。世の中のコミュニケーションツールがファクスからメールに、メールからメッセンジャーアプリに移ったような変化が、教育現場に起こったのです。再びファクスの時代に戻ることはありません。(談)
全ての授業がハイブリッドになる、カテゴリーごとに内容を検討
法政大学 副学長 廣瀬 克哉 氏
法政大学 副学長 廣瀬 克哉 氏
 オンライン授業を実践してみると、意外なことに語学の授業で高い効果がありました。リアルタイムのオンライン授業では、学生は緊張感を保ち続けます。また、レベルアップした少人数のグループを作って討論させる際、リアルの授業では時間がかかりますが、「Zoom」のブレークアウトセッション機能を使えばすぐにできて、討論の時間を十分取れます。

 今後は全ての授業がハイブリッド型になるでしょう。当然、その内容は科目によって大きく変わりますが、知識の伝達が中心になる大教室型の授業はオンライン比率が高まるでしょう。オンライン授業を中心としつつ、学期の途中で何度か集まる機会を設けたり、学修の仕上げの段階で集まったりする形も考えられます。実技、実習系の授業については、動画をあらかじめ見せておけば習得度が上がるでしょう。講義、実技、演習、語学などのカテゴリーごとに考えていきます。こうした授業について、プロジェクトチームを立ち上げて検討に入ります。(談)
教員は自分の持ち味を生かす授業を
青山学院大学 副学長(学務・学生担当) 稲積 宏誠 氏
青山学院大学 副学長(学務・学生担当) 稲積 宏誠 氏
 授業がオンラインになったことで、大学の教育がディスクローズ(開示)され、これまで大学の教員だからということで守られていたものが白日の下にさらされました。誰でも教えられるような知識を伝達するだけなら、その教員でなくてもよいわけです。となれば「誰が教えても同じなら、優れたオープン教育コンテンツがあれば、それで十分じゃないか」という議論が出てきます。大学教員は何のために居るのかという話にもつながります。

 もちろん、対面で教える方が良いという意見もありますし、教科や学問領域によっても違います。しかし、「200人、300人といった大勢の学生を対象にしたマスプロ教育は、評価システムがきっちりできていればオンライン、オンデマンドにしてよいのではないか」という議論はしていくつもりです。

 青山学院大学は、教育大学として学生をきちんと育てることができないと存立基盤がなくなります。大教室での授業と違って、演習や実習、アクティブラーニングは、教員の研究内容や学生に対する取り組み方が表れるため、誰がやっても同じにはなりません。大学教員は自分なりの持ち味を生かす授業に注力すべきでしょう。(談)
オンデマンドとアクティブラーニングの“ベストブレンド”を目指す
名古屋大学 副総長(教育・留学生担当) 藤巻 朗 氏
名古屋大学 副総長(教育・留学生担当) 藤巻 朗 氏
 ICTを活用した大学の授業には、いろいろな組み合わせが考えられます。知識を得るのは、インターネット時代には簡単です。得た知識をどう使うのかが問題になります。デジタル教材などを使って知識を先に入れておき、教室でディスカッションをするアクティブラーニングなど、自分で考えるトレーニングが大事です。今は、オンラインやオンデマンドとアクティブラーニングの“ベストブレンド”を目指しています。

 これは個人的な意見ですが、みんなが習う知識伝達型授業は、図書館の本と同じで、志向が違うデジタル教材をいくつか用意しておき、その中から選べるようにしておけば十分ではないでしょうか。

 ただし、オンデマンドのデジタル教材を用意するだけで終わってはだめです。コミュニケーションが取れない一方通行の授業は、教育としては大問題です。分からないことがあればTAに聞ける体制を整えたり、先生が学生の質問に集中的に答えるオフィスアワーを設けたりすることで解決できるのではないかと考えています。(談)

初出:2020年10月19日発行「日経パソコン 教育とICT No.14」