日本教育工学協会(JAET)は2021年11月19日と20日の両日、第47回全日本教育工学研究協議会全国大会(大阪大会)をオンライン形式で開催した。先進校の公開授業を通して、ICTを効果的に活用した授業、情報活用能力の育成を目指した授業などを紹介した。また、地方自治体の取り組み事例を報告するセッションや、教育関係者によるパネルディスカッションなども行われた。

 基調講演は、文部科学省初等中等教育局 学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、学びの先端技術活用推進室長、GIGAStuDX推進チームリーダーの板倉寛氏が「教育の情報化に関する動向等について」と題して、GIGAスクール構想の進捗(しんちょく)や最新状況などについて話した。

文部科学省の板倉氏は、GIGAスクール構想の進捗や現在の課題などについて講演した
文部科学省の板倉氏は、GIGAスクール構想の進捗や現在の課題などについて講演した
出所:文部科学省「教育の情報化に関する動向等について」
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 2020年に始まった全国の小中学校の児童・生徒1人1台のコンピューター配備と、高等学校も含めた高速の校内ネットワークを整備するGIGAスクール構想により、学校教育でICTを活用するインフラは一気に整備された。デジタル庁が教育関係者を対象に実施したGIGAスクール構想に関するアンケートでは、ICTの「環境整備」と「活用支援」の両面でいくつか課題が出ているという。アンケートでは、児童・生徒からは約21.7万件、教職員・保護者からは約4.2万件で、合わせて約26万件の回答を得たという。

2021年7月にデジタル庁が実施した教職員や保護者を対象にした「GIGAスクール構想に関する教育関係者の皆様へのアンケート」と、児童生徒が対象の「タブレットについてのアンケート」では、約26万件の回答が得られた
2021年7月にデジタル庁が実施した教職員や保護者を対象にした「GIGAスクール構想に関する教育関係者の皆様へのアンケート」と、児童生徒が対象の「タブレットについてのアンケート」では、約26万件の回答が得られた
出所:デジタル庁ほか「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について」
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 一例として、最新の学習者用端末が整備されたが、学校でのインターネットの利用やWebブラウザーの動作が遅いという問題がある。学校からインターネットサービスプロバイダー(ISP)と直接契約してインターネット接続するローカルブレークアウトを使っている学校では、契約回線の帯域が狭いことなどが原因だった。自治体のセンターサーバーを経由してインターネット接続する集約型では、学校とセンターサーバー間の帯域の狭さや、サーバーの性能が低いことなどが原因となる。学校側の無線LANの設定や、ルーターやスイッチの性能が低いことなどが理由の場合もあった。

 文部科学省は、ネットワーク環境の事前評価(アセスメント)を実施することを奨励しているが、予定済みを入れると実施するのは全自治体の半数弱にとどまり、54%の自治体では事前評価の実施予定がないと回答している。板倉氏は、教職員や教育委員会担当者だけでネットワーク環境を正確に評価し、不具合などを特定するのは困難と指摘。専門家の協力を得ることが重要だと話した。今後、ネットワークに関する全国一斉のアセスメントと応急対応を検討するという。

 端末に関しては、児童・生徒1人1台環境は国からの補助金を活用しておおむね達成できた。一方で、GIGAスクール構想の補助金の対象ではない教員など指導者用コンピューターが古くて、使いにくいという回答があった。教職員用端末はこれまでに地方財政措置が取られており、地方交付税で1教室1台の端末を整備していく。

 また、ICT環境が整備されたことで、教職員に対する活用支援を充実させることが課題として浮き彫りになった。端末の設定などの負担が教員に集中している状況を改善するため、支援体制を充実させることを目的に「GIGAスクール運営支援センター事業」を開始する。2021年度内には端末の利活用促進に向けたガイドライン等を策定予定としている。

 授業など学習指導の支援では、「指導法の普及が十分ではない」という意見に対して、2020年12月に発足したGIGA StuDX推進チームが、全国の教育委員会・学校に対してICTを活用した学習指導等の支援活動を展開している。優良事例の情報発信やオンライン相談会・研修会、メールマガジン配信などの情報共有や支援のほか、教職員支援機構と連携した解説動画などオンライン研修プログラムの充実、ICT活用教育アドバイザーによる専門的な助言なども実施していく。

 今後は、学習コンテンツの充実、全国学力・学習状況調査のCBT化、校務のデジタル化による効率化、GIGAスクール構想後の教員や学校施設の在り方などを文部科学省が中心に検討する。また、デジタル庁では児童・生徒一人一人の学びを深めるために教育データの利活用に向けたロードマップの作成、経済産業省などと連携したEdTechの整備、STEAM学習コンテンツの充実などが検討されていると話した。