国立極地研究所は例年、学校教員を南極・昭和基地に派遣して、教員が現地から所属校などに対して授業を行う「教員南極派遣プログラム」を実施している。2021年度は、2人の教員が11月に日本を出発する第63次南極地域観測隊(夏隊)に同行し、南極授業を担当する。そのうちの一人、宇都宮大学共同教育学部附属小学校の渡邊雅浩教諭の寄稿と国立極地研究所の協力で、南極授業に向けた取り組みを連載で紹介する。

 はじめまして! 宇都宮大学共同教育学部附属小学校、理科担当教諭の渡邊雅浩です。私は、今、南極へ向かう南極観測船「しらせ」の中から、この原稿を書いています。第63次南極地域観測隊に同行し、南極から衛星中継を使って授業を行う「南極授業」の授業者となり、栃木県教員初の教員同行者として、南極へ向かっています。

2021年11月17日に船上で赤道を通過した際の渡邊雅浩教諭
2021年11月17日に船上で赤道を通過した際の渡邊雅浩教諭
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第63次南極地域観測隊が乗船する南極観測船「しらせ」
第63次南極地域観測隊が乗船する南極観測船「しらせ」
提供:国立極地研究所
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2018年10月の南極授業への出会い

 「南極から授業をしてくれる先生を募集します!〜教員南極派遣プログラム〜」。

 2018年の10月、机上に置かれた1通の書類に目を引かれました。それは、極地研からの募集要項で、回覧文書として私の所に回ってきたものでした。教員南極派遣プログラムとは、「極地の科学や観測に興味を持つ現職教員を南極の昭和基地に派遣し、衛星回線を利用して、現地から派遣教員が企画する『南極授業』を行うもの」です。南極授業は、極地研、日本極地研究振興会が主催し、文部科学省(南極地域観測統合推進本部事務局)と連携して実施します。派遣教員は、この「南極授業」や帰国後の活動を通して、小・中・高等学校等の児童や生徒をはじめ、広く国内に向けての南極に関する理解向上につながるさまざまな情報発信をすることになっています。

 現在、私が所属する宇都宮大学共同教育附属小学校は教科担任制の学校であり、私は理科の教科担当をしています。附属小学校の前は、イタリアのミラノ日本人学校で2014年から2017年にかけて3年間、小学校の担任をしながら、中学3学年全ての理科を担当していました。そんな理科教員としての南極への興味と、自分にとって未知の世界を見て、そこから授業をするという好奇心に駆られて、この教員南極派遣プログラムに応募することにしました。

 教員南極派遣プログラムの応募審査は例年、1次選考に書類審査があります。ここでは所属(教育委員会等)の推薦書類や履歴書、南極授業の授業計画案、帰国後の活動予定、健康診断書などを1月初めまでに提出します。そして、2月初めに行われる2次審査では、観測隊の隊長陣や極地研職員へ南極授業の授業案のプレゼンを15分程度行います。

 南極観測隊の同行者に選ばれた際には、3月初めに約1週間かけて行われる「南極地域観測隊冬期総合訓練」への参加が義務付けられており、当時小学6年生の担任をしていた私は、児童が卒業する直前に1週間も学校を不在にすることができず、その年の応募は見送ることとしました。そして1年間、南極について調べ勉強していくうちに、自分の行いたい南極授業の形というものが見えてきました。