文理を問わない全学導入のAI講座

 関西学院大学の巳波弘佳教授は、同大が実践する文理横断型のAI活用人材育成プログラムを紹介した。巳波教授は、「AIを活用した新サービス・新製品の企画」や「顧客ニーズの把握」といったスキルの大切さを指摘。AIに関わる人材を、新技術などの研究を進める「AI研究・開発者」、AIを活用したシステムを開発したりデータを分析したりする「AIスペシャリスト」、AIを活用したサービスや製品を企画・提供する「AIユーザー」に分類し、AIスペシャリストやAIユーザーが大幅に不足すると指摘。さらに、AI活用人材を「文系・理系を問わず、AI・データサイエンス関連の知識を持ち、それを活用して現実の社会課題・ビジネス課題を解決する能力を有する人材」と位置付け、こうした人材の育成が必要だと訴えた。

関西学院大学の巳波教授は、同大が導入した「AI活用人材育成プログラム」を紹介した
出所:講演資料

 関西学院大学では2018年に日本IBMとAI共同プロジェクトを発足し、2019年4月に「AI活用人材育成プログラム」を開講した。全科目を新規開発して細部まで関連性を考慮して体系化し、受講生全員が学ぶ「AI活用入門」に続いて、「導入演習」や「実践演習」に進み、「発展演習」へと続く。2021年度には、全てオンライン上で授業が完結するeラーニングでの入門科目を開講。教員が直接指導する高度な演習や課題解決型学習(PBL)と組み合わせて、効率的な授業運営を進めるという。

 巳波教授は「AI人材育成は理系中心のプログラムになりがちだが、文系学生の方が社会課題の解決にAIを活用する視点を持っている場合もある。文系・理系の枠を超えて、全学開講科目として多くの学生に目を向けてもらうのが大切だ」と話した。

教員養成段階からAIリテラシーを身に付ける

 宮城教育大学の安藤明伸教授はまず、同大の附属中学校3年で実践したAI教育の成果と課題について話した。これは3回の授業で実施した技術科の取り組みで、AIの仕組みや機械学習の流れを知り、AIを活用するプログラミングで問題を解決するという内容だ。

 生徒はAIの基礎について学ぶとともに、実際にプログラムを作成する際に、データの内容が良くなかったり、データ量が足りなかったりすると、正確な結果が導き出せないといった実践を通じて実社会におけるデータの重要性などを学ぶことができる。授業を通して、生徒からは「AIというとなんでもできるものだと思っていたが、人がデータを読み込ませたりする必要があり、全ての仕事を奪ってしまうというような誤解が解けた、使い方によっては問題解決に大いに役立つことが理解できた」といった反応があったという。

 安藤教授は続いて、同大学の中学校技術科の教員を養成する授業での取り組みを紹介した。この授業では、プログラミング不要で画像の機械学習を体験できる日経BPの教材ツール「ちの」を利用した。1回目の授業(90分間)では、各100枚のネコの写真とイヌの写真を基に学習すると、イヌとネコを判別する人工知能を簡単に構成できることを体験。こうした技術を教育分野でどのように利用できるかを議論した。その後学生は、各自のアイデアを基に画像を収集して機械学習を実践し、2回目の授業でその結果をプレゼンした。

宮城教育大学の安藤教授は、同大学の教員養成課程での授業実践例について紹介した
出所:講演資料

 安藤教授は、授業を通じて、AIに対して「難しい」という印象が減るなどの変化が学生にあったと報告。今後AI人材を育成していくに当たり、教員養成課程でAIリテラシーを持つ学生を増やすことの重要性を指摘した。

 こうした実践例などを受けて日経BPの中野局長補佐は、既存の情報基礎教育のカリキュラムの中で、社会でのAI利用の具体例を知り機械学習を体験する1~3回程度の授業からAI基礎教育を始めることを提言。同社のコンテンツサービス「日経パソコンEdu」や教材ツール「ちの」を利用したAI基礎教育の実践例を紹介した。

日経BPの中野局長補佐が提示したAI基礎教育導入のポイント
出所:講演資料
プログラミング不要で画像の機械学習を体験できる日経BPの教材ツール「ちの」
出所:講演資料