GIGAスクール構想により、児童・生徒に1人1台のコンピューターが整備される。活用のカギは教科書のデジタル化にある。しかし、デジタル教科書が普及するには、費用負担をはじめ、法制度や技術上の課題を解決する必要がある。
「GIGAスクール構想で端末がそろったら、次は学習者用デジタル教科書の波が確実に来る」と話すのは、東北大学大学院 情報科学研究科教授の堀田龍也氏。GIGAスクール構想はコロナ禍で前倒しされ、2020年度中に児童・生徒用コンピューターの整備を終える計画だ。自治体が整備する分も含めて1人に1台の端末がそろえば、次に必要なのはその上で使うソフトウエアやコンテンツ。中でも、最も重要なのは主たる教材である教科書だ。文字の拡大表示や音声読み上げ、マーキングなど、デジタルならではのメリットは多い(図1)。
ところが、現実はお寒い状況だ。文部科学省の調査によると、小中学校・義務教育学校における学習者用デジタル教科書の整備率はいずれも10%未満。高等学校は5.2%にすぎない(図2)。普及を妨げる主な要因は2つ。一つは児童・生徒1人に1台のコンピューターが必要なこと。もう一つは、デジタル教科書が無償ではないことだ。
2024年度に無償化へ
学校教育法等の改正により、それまで紙媒体しか認められていなかった小中学校・高等学校の教科書において、デジタル版が使えるようになった。ただし、その普及にはさまざまな壁が立ちはだかっている。それらを一つひとつクリアして普及を目指す動きが加速している。
前述の「1人1台端末問題」は、GIGAスクール構想と自治体による整備が進めば解決する。これに対して「デジタル教科書は有償」という課題は、今のところ自治体や保護者の費用負担で解決するしかない。紙の教科書と同様に、学習者用デジタル教科書も無償で配布されない限り、全ての児童・生徒が使えるようにはならないだろう。
とはいえ、現状の価格が200〜2000円程度とされる学習者用デジタル教科書を全児童・生徒に無償給与するには、巨額の財源が必要だ。だが、その問題は解決への道筋が見えてきている。萩生田光一文部科学大臣は10月6日の記者会見において、平井卓也デジタル改革担当大臣らとの会談内容に触れ、「今は紙を無償化対象にして全ての児童・生徒に配布しているが、これをデジタルに変えて、紙を教材的に残すような方法も一つの考え方としてはあってはいいのではないかという提案があった」と話している。
この発言は、政府内でデジタル教科書の無償化が既定路線になっていることを示唆している。行政のデジタル化と併せ、デジタル教科書の導入を含む教育のデジタル化が、新設されるデジタル庁の目玉政策の一つとして検討されている可能性もある。
もちろん、すぐにデジタルへ全面移行するのは、財源だけでなく関係法令などさまざまな課題があり難しい(図3)。そこで、文部科学省がターゲットにしているのが、次の教科書改訂時期である2024年度だ。同省はデジタル教科書について、2024年度(令和6年度)に「小学校の教科書改訂を契機とした本格導入」をするとしている(図4)。この「本格」がミソで、本格導入とデジタル教科書の無償化はセットで検討されている と考えてよい。