特別支援はいち早く導入進む

──全ての学年や教科でデジタル教科書が同時に導入されますか。

 例えば、小学1年生は紙の教科書を使って文字を書くことが重要かもしれません。紙とデジタルの教科書が併存するこれからの数年間は、何年生からデジタル教科書を使うのがよいかを検証する過渡期です。

 端末が1人1台整備されて日常的に使われるようになると、紙の教科書の方が使いやすい場面と、デジタル教科書の方が良い場面の両方が出てくるでしょう。科目や単元によっても違いが出てくると思います。そうしたことを実証して知見を蓄え、早く切り替えた方がよい教科からデジタル化を進めることが必要です。

 いち早く切り替わると言われているのが特別支援です。発達障害も含めて特別な支援が必要な児童・生徒は普通学級にも多くいます。端末が整備されることで、こうした子供たちの学習にも資することになるでしょう。

(写真:渡辺 慎一郎)

──デジタル教科書が普及すると教育はどう変わりますか。

 デジタル教科書は、紙の教科書が単にデジタル化されるだけでなく、日本の教育にとって一つのシンボルになります。日常生活がデジタル化していく中で、教育のデジタル化が遅れたことでさまざまな弊害がありました。例えば、教員の過酷な労働環境が改善されないなど、日本の教育の遅れが浮き彫りになりました。

 端末を使ってさまざまな情報にアクセスして自分の考えを整理したり、相手に伝えたりする情報活用能力を子供たちが持ち始めたときに、どの学年のデジタル教科書でもいつでも参照できれば、子供によっては学年を超えて先に進んだり、前の学年の復習ができたりするようになります。

デジタル庁に期待

──デジタル教科書は、どの教科でも全てのOSで同じように使えないと困ります。バラバラに開発するのではなく、プラットフォームを標準化した方がよいのでは?

 基本的には共通プラットフォームに集約して、OSごとにいくつかのビューワーが提供されるのがよいと思います。デジタル教科書は電子書籍の一つのカテゴリーと定義し、教科書ならではの機能を追加できるようにするのが現実的な標準化でしょう。教科書会社はビューワーを開発する必要がなくなり、コンテンツ制作に注力できるようになるのが理想です。

──今後デジタル庁の発足が予定されています。

 菅義偉内閣が発足して、目玉の政策として行政のデジタル化をけん引する「デジタル庁」創設に向けて動き出しました。

 年内に基本方針をまとめて2021年1月の通常国会に関連法案を提出する方針です。司令塔になるデジタル庁という横串の組織を作って省庁間をつなぎ、取得したデータは個人に戻す、ビッグデータを解析できるデータ基盤を整備するといったことが、デジタル庁の重要な役目です。

 データ基盤が整備されれば、例えば自治体の人口や財政規模と学力調査の関係を分析し、規模が小さい自治体でも高い成果が出ている自治体の教育手法を広めることもできるようになります。逆に、社会財政基盤がしっかりした自治体で、ほかと比べて教育効果が出ていなければ、教育面の課題があると推測できるわけです。

初出:2020年10月19日発行「日経パソコン 教育とICT No.14」