大学など高等教育・学術研究機関における情報通信技術を利用した教育・研究・経営の高度化を図り、日本の教育・学術研究・文化と産業に寄与することを目的に活動を続ける大学ICT推進協議会(AXIES)。例年、大学の教職員や研究機関・企業の担当者に向けて年次大会を開催し、ICT活用に関するセミナーやパネルディスカッション、製品やサービスの展示などを行ってきた。

 2020年は新型コロナウイルスの感染症対策で12月9~11日の3日間、オンラインでの開催となった。例年とは異なる年次大会について、AXIES2020実行委員長の大阪大学 サイバーメディアセンター長・教授の下條真司氏と、AXIES2020プログラム委員長を務める大阪大学 サイバーメディアセンター教授の猪俣敦夫氏に、年次大会のポイントと今後のイベントのあり方などを聞いた。

――AXIES年次大会の準備状況は?

下條 今回、AXIESとしては初めてオンラインによる年次大会になります。実行委員会も戸惑いながら準備を進めていています。年次大会は、シスコシステムズのオンライン会議システム「Webex」を使った講演やセッションが中心となります。2020年は新型コロナ感染症で、大学では対面授業ができない時期が続きました。大学の情報基盤や情報化に関わる人たちが、その時の経験や知見を情報交換したり、交流できたりすればよいと考えています。

AXIES2020の実行委員長を務める大阪大学 サイバーメディアセンター長・教授の下條真司氏
AXIES2020の実行委員長を務める大阪大学 サイバーメディアセンター長・教授の下條真司氏
出所:オンライン・インタビューより
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猪俣 当初考えていた年次大会の内容とは大きく変わりました。もともとDX(デジタルトランスフォーメーション)やスーパーコンピューター「冨嶽」といった大きなテーマを取り上げようと考えていましたが、実際には新型コロナの影響でリモートワークやオンライン授業、VPNの情報セキュリティといった身近な話題が多くなり、セッションもそういった内容のものが増えました。そういう意味では、コロナ禍での業務スタイルとか授業の進め方といった身近でタイムリーな情報が得られると思っています。

AXIES2020のプログラム委員長を務める大阪大学 サイバーメディアセンター教授の猪俣敦夫氏
AXIES2020のプログラム委員長を務める大阪大学 サイバーメディアセンター教授の猪俣敦夫氏
出所:オンライン・インタビューより
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――いつ頃、オンライン開催の方針に決めたのですか?

下條 9月頃にはオンライン開催に決めました。夏頃はまだオンラインと対面での展示会・交流会などを併用するハイブリッド型の開催を模索していましたが、感染が終息しない状況だったので、オンラインだけの開催に踏み切りました。もともと大阪駅近くのグランフロント大阪にある「VisLab OSAKA」を主会場に予定していました。今回はそこに本部機能だけを置きます。セッションや講演などはオンラインでも進められますが、オンライン開催になって一番困ったのは展示会です。リアルな展示会ができないので、手探りで準備を進めています。

――イベントをオンライン開催するメリットや課題はありますか?

猪俣 通常こうした大会やイベントは、コンベンションセンターやホテルなどで実施するのが前提で、講演のテーマや参加希望状況によって部屋のサイズを割り当てるのですが、今回は集客方法やセッションのプログラム組み立てが今までとは全く違ったやり方になり、戸惑いがありました。リアルな講演だと部屋の収容人数によって聴講希望を断らなければならなかったり、部屋数に限りがあって開催できるセッション数に上限があったりするのですが、オンラインの場合は聴講人数やコマ数の制約がないので、柔軟に設計できます。

下條 メリットとしてはより広く多くの人に参加してもらえることです。オンラインなら講演する側も、聴講する側も場所や時間の制約なしに参加できる点は大きいと思います。一方、オンラインだとどうしても臨場感に欠け、聴講者からのフィードバックや質問などが活発に出にくい点があります。また、対面のイベントでは研究概要をまとめた大判ポスターの前で行うポスター発表があるのですが、オンラインで「ポスター・セッション」をどう実現するかは苦労しています。

猪俣 対面イベントの良さは、やはり参加者と直接やり取りができることです。今回はいわゆるウェビナー(Webセミナー)形式なので、片方向のコミュニケーションになりがちです。参加者からの質問は、チャット機能などを利用して、時間の制約のある中で対応したいと考えています。また、リアルなイベントだと会場を覗いて参加するかどうかを決める「ちょっと見」ができますが、オンラインのセッションではこれがやりにくい。オンラインの会議室をポスター発表と紐づけて、何人の参加者がいるかをわかるようにしたりして「ポスター・セッション」に参加しやすいように工夫しています。AXIESの年次大会の良さは実際に対面で交流できる点です。そのため、交流会の実現方法は苦心しています。オンライン上でテーブルを囲んで交流できるような仕組みを考えています。