せっかく進んだ情報基盤の活用を元に戻さないことが重要

――2021年以降は、どのような方針で年次大会を実施していくのですか?

下條 理想的にはオンライン開催と対面の会場開催のハイブリッドが良いと感じていますが、運営は大変でしょう。

猪俣 ハイブリッド開催だと、実際の会場とオンラインの会場を両方管理して運営しなければならないので、2020年のような運営体制では人的なリソースが足りないだろうというのが正直な感想です。外部のイベント事業者を入れて運営の手配を行うなどしないと、効率的な大会運営は難しいかもしれません。

――AXIESは大学の情報基盤などに関わる方が多く集まる組織です。コロナ禍で大学のICT活用に求められるものは変わってきたのでしょうか?

下條 AXIESに関わる教員の方々は、2020年4月以降、コロナ禍でのオンライン授業やテレワーク、事務の効率化などに忙殺されてきたと思います。一方でなかなか進まなかった教育のDXが一気に進むきっかけになった面もあります。せっかく進んだ情報基盤の活用を元に戻さないことが重要です。これまでに見えてきた課題は、教育データをうまく活用し、学生の指導につなげていくことです。また、4月から授業目的公衆送信補償金制度が始まりました。オンライン授業で著作物をうまく活用していくこともテーマになるでしょう。

猪俣 ICTを活用した授業は以前からありましたが、コロナ禍で全面的にICTを使わざるを得なくなったというのが実情でしょう。この半年ほどで教員もオンライン授業にどんどん慣れてきました。次にやるべきことは、対面と同じような演習ができるようにしていくことです。今回の年次大会ではいろいろなアイデアが出たり、情報共有されたりすると思いますので、うまく生かしていくことが必要でしょう。

下條 国立情報学研究所(NII)が実施している「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」を視聴していても、欧米で既に行われている教育データの活用や評価手法、ラーニング・アナリティクスやサポートといったことについて、ようやく日本の大学も追いついてきたと感じます。コロナ禍という状況ではありますが、大学教育が変わりつつあることを実感しています。

――今後、日本の大学教育はどう変わっていくでしょうか?

下條 授業や議論をするには、やはり対面の方がやりやすい面があります。一方でオンライン授業なら事前に予習しやすかったり、後から録画データを見たりできる良さがあります。大学に来るのが不安な学生もいれば、住居のネットワーク環境が不安定で大学の方が勉強しやすいという学生もいます。こうした多様性に対応していくのも重要だと感じています。日本の大学教育はコロナ禍で大きく変わりましたが、将来に向けてこれを定着できるかがカギでしょう。欧米の大学にはラーニング・サポートといった授業支援体制があるのですが、日本の大学はまだ足りていない面があります。こうした支援を積極的に行う大学とそうでない大学では、今後は大きな差が出てくるかもしれません。

――AXIESの取り組みが大学教育に寄与する場面も増えそうです。

下條 日本では大学のICT活用はあまり進まなかったのですが、コロナ禍をきっかけに否応なしに進み始めました。これまでAXIESが推し進めてきた教育データの利活用や研究データの整備といったことは、ますます重要になります。AXIESが最先端で進めてきたことが、今こそ大学教育の役に立つように期待しています。

猪俣 AXIESには多くの部会があり、そこで生まれた知見は今こそ使わざるを得なくなったという状況でしょう。今回の年次大会は、これまで培ってきた一番ホットな事例や研究成果を知る場になるでしょう。