富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、2019年11月20日、国内のノートパソコン製造拠点の島根富士通(島根県出雲市)で同社の事業戦略を披露した。会見の冒頭、齋藤邦彰社長は、2019年9月に島根富士通のノートパソコンとタブレットの月産生産台数が30万台突破し、1990年の操業開始以来、最高台数を記録したと語った。Windows 7のサポート終了、消費増税前の駆け込み需要の追い風を受けての数字だ。年間約200万台、月産15万台前後が通常ペースだけに、9月の突出した好調ぶりが分かる。ちなみに、2019年5月には島根富士通の累計生産台数が4000万台に到達している。

島根県出雲市の島根富士通。富士通のパソコン製造拠点として1990年に操業開始。ノートパソコン、タブレットを主に製造する
「多様な人が快適に暮らせる近未来社会をFCCLのコンピューティングが支える」とビジョンを語る齋藤社長
(写真提供:FCCL)

 続いて齋藤社長は、同社がここまで培ってきたパソコンやタブレットの製造・販売の経験・実績を生かして、「多様な人が快適に暮らせる近未来社会を支えていくことをミッションとする」と説明。「エッジコンピューティング」「エッジAIコンピューティング」などの新しい事業領域を拡大していく考えを示した。

齋藤社長が示したFCCLの現状と展望。パソコン、タブレット製造を発展させ新領域に進展

 続いて登壇したFCCLの仁川進執行役員常務は、齋藤社長の説明を受けて新領域について詳細に紹介した。仁川氏はまず、「Inter-Connected Computing Platform(ICCP)」と呼ぶ同社のコンセプトを示した。これは、教育や小売り、工場、交通機関など、さまざまな現場でエッジコンピューティングを具現化し、クラウドと連携させるものだ。

FCCLの「新領域」への取り組みを説明する仁川常務
(写真提供:FCCL)
日本のAI市場の動向とトラフィックの推移

 ネットワークにつながるデバイスが増加して、クラウドサーバーとのデータのトラフィック量が急増している。それに影響されて通信速度や処理速度の低下など、ユーザーの利便性が損なわれることもある。そこでFCCLは、「これまでお客様のニーズに応えながら培ってきたコンピューティング技術を駆使して」(仁川氏)、同社独自のエッジコンピューティングを提供することで快適な操作環境を提供しようとしている。

 FCCLの提唱するICCPでは、ローカルでデータのAI(人工知能)処理や最適化処理などをして、クラウドとやりとりする「MIB(Men in Box)」と「Infini-Brain」という2種類の製品の開発に取り組んでいる。MIBは無線LANルーター機能を備えたエッジコンピューターで、教育機関での使用を想定している。Infini-BrainはAI関連の処理機能を強化したエッジコンピューターで、映像の解析などの用途を見込んでいる。

FCCLの新領域プラットフォーム「ICCP」を実現するための製品「MIB」と「Infini-Brain」
クラウドとローカル両方でデータのやりとりに余裕を持たせる

 教育現場のネットワーク回線の帯域は、貧弱な場合が多い。このため、教室で生徒が1人1台の端末で一斉にネット上の映像コンテンツにアクセスする場合などは、情報トラフィックの遅滞が起きがちだ。MIBはデータを内部に蓄積して生徒に提供するコンテンツサーバーの機能を備えている。生徒がネット上のコンテンツに一斉にアクセスした場合は、MIBに保存したデータを個々の生徒に提供することで、校内のネットワークへの負荷を軽減することができる。

出雲市内の小学校でMIB導入の実証実験を始めている