2021年9月1日に正式発足したデジタル庁が、7月に文部科学省などと実施したGIGAスクール構想に関するアンケートには、児童・生徒と教職員から約26万件もの意見が寄せられた。それらを分析した結果、GIGAスクール構想に関するさまざまな課題が明らかになった(図1)。時期は前後するが、5月には文部科学省のGIGA StuDX推進チームも、自治体を対象にGIGAスクール構想関連の課題を調査している(図2)。

●デジタル庁の調査で多数の課題が浮き彫りに
●デジタル庁の調査で多数の課題が浮き彫りに
図1 デジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省は教育関係者を対象としてGIGAスクール構想に関するアンケートを合同で実施した。2021年9月に発表された報告書では、さまざまな場面で多くの課題が残されていることが明らかになった。出所: デジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について」
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●教員のICT活用指導力が悩みの種
●教員のICT活用指導力が悩みの種
図2 文部科学省が全国の都道府県・市町村を対象に実施したアンケートでは、義務教育段階の課題として、「学校の学習指導での活用」「教員のICT 活用指導力」「持ち帰り関連」を挙げる自治体が多かった(左)。高等学校では生徒用コンピューターの購入予算が付かなかったため、「端末整備」が一番の課題になっている(右)。出所: 文部科学省「自治体におけるGIGAスクール構想に関連する課題アンケート概要」
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 これら2つの調査と教育関係者への取材を併せて分析すると、主に図3のような課題があることが分かった。これらは「使わせない・使えない」と「生かせない」に分けられる。

●「端末を使えない、生かせない」を克服するには
●「端末を使えない、生かせない」を克服するには
図3 GIGAスクール端末活用の主な課題は、「使わせない・使えない」と「生かせない」に分けられる(左)。表の右は、考えられる解決策と文部科学省が課題解決のために2022年度予算で概算要求している事業
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利用制限が活用の足かせに

 前者で指摘が多かったのは、端末の使い方が制限されていたり、持ち帰り学習ができなかったりと、自由に使えない点だ。例えば、インターネット接続に過剰なフィルタリング設定をしているため、アクセスできるWebサイトが制限され、調べ学習などで満足に使えないといった具合。端末を使える場面が限定されると、日常的な活用ができず、情報活用能力の育成に支障をきたす。

 GIGAスクール端末の使い方については、教員、行政、保護者にそれぞれ多様な意見がある。安全を重視して使い方を制限する考え方も、トラブルがある程度起こることを前提として、その解決も情報リテラシー教育の一環とする考え方もある。

 現時点で正解を見いだすのは難しいが、少なくとも国は端末の積極活用を推奨していて、持ち帰りを含む家庭学習でのICT活用も推進したい考えだ。教育委員会や学校の管理職は、GIGAスクール構想の理念を再確認して、端末利活用の方針を考える必要がある。

持ち帰らなくても学習できる

 端末の持ち帰りを認めない自治体が多いのは、家庭でのWi-Fi環境の不備やデジタル教材の不足、端末故障時に対応できないといった問題があるからだ。加えて、保護者からは「子供が端末を学習以外に使うのではないか」という不安の声も寄せられる。当然、家庭での端末の使い方は子供と保護者、学校との間でルールとして決めておかないとトラブルを招く。文部科学省は、「持ち帰りを含めたさらなる利活用を促進するためのガイドラインを、可能な限り早期に策定する」としている。

 ただし、ICTを活用した授業や学習が定着してくれば、端末を家に持ち帰る必要はなくなるだろう。文部科学省 初等中等教育局 学校デジタル化プロジェクトチームリーダーの板倉寛氏は、「オンライン学習によって自宅での学習がより豊かになることが大切。学校の端末を持ち帰らなくても、クラウドを活用すれば自宅のパソコンなどで学習できる」と説く。アカウントさえあれば、どこでも、どんな端末でもログインして学習できるのがクラウドの利点だ。

*取材時の板倉寛氏の肩書は初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長