前のパートでは「GIGAスクール端末を使わせない・使えない」という課題を取り上げた。もう一つの大きな課題が「端末を生かせない」だ。その最大の原因は、教員のICT活用指導力不足にあると言ってよいだろう。先に紹介したGIGAスクール構想に関するアンケートで、課題とする意見で多かったのが、「教員のICT活用指導力」と「学校の学習指導での活用」の2つだ。

普段使いする中で慣れる

 教員が学習指導でICTを活用できない理由はさまざまだ(図1)。主な声を拾ってみると、単にスキルが不足しているだけでなく、ICTは使えてもそれをどう授業に取り入れればよいのか分からないという教員が多い。そうした人たちは「やる気」はあるわけだが、ベテランの中には「チョークと黒板で授業はできる」とばかりに、ICT活用教育に後ろ向きの教員もいる。

●教員がICTを活用して児童・生徒を指導するには
●教員がICTを活用して児童・生徒を指導するには
図1 児童・生徒の利益を第一に考えるなら、ICTを教育に活用しないという選択肢はない。多くの教育関係者は、ICTの普段使いから始めるようアドバイスしている
[画像のクリックで拡大表示]

 教員のICT活用指導力に関する課題は、「リテラシー・スキル」と「マインドセット」の2つに分けて解決策を探る必要がある。まず、ICTリテラシー・スキルの低い教員が多いのは、多くの関係者が指摘するように、普段の業務や授業にICTを使ってこなかったことが一番の原因だ。だが、それは教員の問題ではなく、校務や授業のデジタル化に有効な施策や投資を十分にしてこなかった行政に責任がある。

 この課題解決には、教員も子供たちも、授業以外の活動から気軽に端末を使って慣れていくのがお勧めだ。授業以外の活動で端末を使っていくうち操作に慣れ、やがて授業の中でどう生かせるのか、アイデアが出てくるはず(図2)。行政の側は、地道ではあるが教員研修の拡大や充実を図っていくほかないだろう。

●授業以外の活用からステップアップ
●授業以外の活用からステップアップ
図2 ICT 活用教育の研究者・経験者の多くは、初めのうちは授業以外の活動でコンピューターの利用に慣れるようアドバイスする
[画像のクリックで拡大表示]

情報は自分で取りに行くもの

 コンピューターは使えるが授業での生かし方が分からないと言う教員からは、必ずといってよいほど「具体的な授業の事例を発信してほしい」という要望が聞かれる。確かに、ほかの学校や教員が端末を使って授業をしている様子を見れば、自分の授業にどう取り入れたらよいのか考えるヒントになるだろう。

 しかし、こうした要望が多数寄せられるのは不思議なことだ。なぜなら、文部科学省はポータルサイトの「StuDX Style」や「YouTube」のチャンネルで活用事例などの情報を発信している。これ以外にも、自治体のWebサイト、GoogleやマイクロソフトなどOSベンダーのWebサイトにも、たくさんの事例が掲載されている。探そうと思えば、ICT活用教育のヒントはいくらでも出てくるのだ(図3)。文部科学省でGIGA StuDX推進チームリーダーも務める板倉寛氏は、「StuDX推進室からアウトリーチして学校現場で困ったことを聞く努力をしている」と強調する。

●日ごろの活用事例を共有
●日ごろの活用事例を共有
図3 尼崎市立教育総合センターのWebサイトには「ICTを活用した学習の一コマ」というページがあり、各学校のWebサイトに掲載された授業風景を見られる。さまざまな端末の活用法を教員が共有できる
[画像のクリックで拡大表示]

 にもかかわらず、情報が学校現場の教員に届かないのは、こうした社会で一般的な情報発信の仕方がうまく機能していないからではないか。何人かの教育関係者が指摘しているのが、教員は同僚や同じ地域のほかの教員といったコミュニティを通じて得る情報を重視する傾向があること。行政がいくら「こんな事例もありますよ」と情報を送っても、教員間で広まらないと全ての教員には伝わらないのではないか。

 ICT活用教育に関することに限らず、現場の教員には大量の情報が下りてくる。その中で、新しい情報を全て取り入れるのは難しい面もあるだろう。だが、子供たちのことを思えば、常にアンテナを張って、必要な情報は積極的に探していく努力も必要だ。一方で行政の側は、こうした特性を生かした情報伝達方法を検討する余地がある。